2009年11月

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胃がんの手術を受けて今月でちょうど2年がたちました。3ヶ月に一度血液検査を受け、6ヶ月に一度CT検査を受けています。手術で胃は3分の1になりましたが、小さくなったことの自覚症状はありません。日常生活は手術前とまったく変わりません。食事はなるべく少なくするように心がけているくらいで、他には気を使っていません。食事の量を少なくしているのは、体重を増やしたくないからです。それは好きなテニスを続けたいためです。

胃がんと分かったのは偶然でした。2年前の9月にテニスコートで球を打ち始めてしばらくすると体の力が抜けていくような感じになり立っていられなくなりました。そのときは風邪かなと思って近くの病院で薬をもらい飲んでいましたが治りません。血液検査をすると貧血状態と分かりすぐに総合病院で胃カメラで検査をしました。その結果、胃潰瘍で出血していたことが分かり、その一週間後に胃がんと分かりました。宣告を受けたときは物凄いショックでした。

がん専門病院を探し、すぐに診察を受けました。再度胃カメラなどの検査を受け手術を受けることになりました。ただ、医師から”手術は必要ですが、心配ありません”と言われたときは大いに元気を取り戻しました。がん患者のストレスは相当なものです。医師の一言がどれだけストレスを和らげるか身をもって体験しました。それから手術は2ヶ月先で、その間は普通の生活をしていてかまわないと言われてときは、なぜすぐに手術をしないのかと疑問に思いました。手術は無事に済み経過も順調です。手術は、腹腔鏡手術でした。手術痕は4~5cmほどです。良い医師と良い病院に出会えたのは幸せでした。しかし、がんについては分からないことばかりです。

入院中に複数の医師にがんになる原因について質問をしましたが、皆さんから分からないという答えが返ったきした。がんになる原因は、食べ物やストレスなどいろいろ指摘されていますがはっきりしていないようです。また発病した時期も分かりませんでした。ただ、原因は分からなくても治療法は急速に進歩しています。治療法は、手術、放射線治療、抗がん剤、免疫療法などです。

がんの原因は、遺伝子の病気といわれています。がんは細胞の遺伝子に幾重もの突然変異が積み重なって発生します。この突然変異が起こるメカニズムは多様ですべてが解明されていません。
突然変異は、通常の細胞分裂のときしばしば起きますが、偶発的に癌遺伝子の変異がおこることもあります。それ以外に発癌の確率を高めるものとしてウイルス、化学物質などがあります。しかし、癌は一つの要因で起こることは少ないためそのことが解明を難しくしているものと思われます。

がんの原因として、タバコと肺がんの関係はよく聞きます。脂肪とカロリーのとりすぎは特に大腸がんの危険性が高まることも言われています。大腸がんや乳がんは動物性脂肪の取りすぎと食物繊維の摂取不足によるものと指摘されています。また過度のストレスは血流や免疫力の低下につながり癌になる確率が高まるとも言われています。さらに癌細胞は低い温度を好むため平常体温が36℃を下回る人の癌発生率は高まるとのことです。等々癌の原因にはいろいろなことが指摘されています。

やっかいなことに、がんかそうでないかは、医学が進んだ今でも病理医が経験を頼りに判断するしかないのです。がんは機械でも薬でも判別できません。それはがん細胞と正常細胞とがきわめてよく似ているからです。がんの手術を受けてから2年間、がんとは何かを知ろうとして本を読んだり、講演会などを聞いたりしてきましたが、はっきりしませんでした。

それにしても日本ではがん患者が多く、死亡原因もがんが多いのです。年間33万人ががんで死亡しています。世界のがん死亡者は年間800万ににもたっしています。これまでもがんに関する研究も数多く行われてきました。世界でガン征圧にかけた資金は数十兆円にものぼるものと見られています。それでもがんによる死亡者は増えているのです。

戸塚洋二博士。東大栄誉教授。ノーベル賞候補とまでいわれた世界的な物理学者ですが2000年に大腸がんを患い4年後に再発しました。このことは、自身のブログに詳細に書かれていました。またNHKや文芸春秋でも紹介されました。再発したがんは、全身の骨や肝臓、肺、脳にまで転移していました。戸塚さんは抗がん剤治療の過程を科学者の目で徹底的に記録していました。そこには癌がんの壮絶な闘いが記されていました。抗がん剤の効果の過程や激しい副作用の状況が詳細に記録されていました。蝕まれていく肉体とその痛みや吐き気などに襲われた状況。抗がん剤は何度変えても効果がなく副作用は続きました。抗がん剤としか戦うしかなかった戸塚さん。2008年の7月に66年の生涯を閉じました。

このようにがんと戦っている多くの人たちがいることを知ると、自分は今は何の症状も出ていないがいづれ再発するのではないかという不安に駆られてしまいます。そのこともあってがんのことをもっと詳しく知ろうとしたのです。これまでがんについて膨大な研究が行われてきてすでにがんについてたいていのことは分かっており、治療法も大幅に進歩していると思っていました。しかし、現実はちょっと違っているようです。

がんの征圧には今後50年から100年はかかるとも見られています。100年目を迎えた世界最大のがん学会がアメリカにあります。参加者17,000人。生命科学や遺伝学など人類の英知を集めた膨大な研究が発表されたいました。この学会から35人のノーベル賞受賞者を輩出しました。その功績はすべてがんのなぞのごく一部を解明したに過ぎなかったのです。

なぜ膨大な発見を続けてもがんは克服できないのか。NHKの特別番組でも紹介されていました。人間の体では毎日数千億以上の細胞が遺伝子をコピーし生まれ変わっています。そのためどこかの細胞がコピーする際にミスをおかしてがんになるのは当たり前なのだと見られています。がんの仕組みは複雑で全体像をつかむことは不可能といわれています。がんの原因が分かって抗がん剤が作られてもその薬が効かない新たながんが現れてくるのです。しかも厳しい環境でも生き残ることができ、抗がん剤や放射線に抵抗力を持つ強力ながん細胞になってしまうのです。したがって現状ではがんの再発は避けられないと見たほうが良いようです。

次々と生み出されてくる治療薬が効かなくなるのは、がんがそれに打ち勝つ強靭な生命力を持っているためと思われます。そのことががんの転移のなぞを深め、いつになったら克服できるかの予を難かしくしているのです。今できることはがんの検査を定期的に受けることと、体に良くないことはなるべく避けることくらいのことのようです。2年前に胃がんと分かったのは、胃潰瘍になって出血したためです。医師からは、そのことが幸いしたと言われました。それまで健康診断をほとんど受けていませんでした。切り取った胃がんの写真を見て驚きました。かなり大きかったのです。この胃がんが発生してどのくらい経っているのかとか、なぜ胃がんになったのかなどは全く分からないそうです。ただ、がんのレベルは低かったようです。

いづれがんを克服する時期が来ると思われますが、現状では、誰でもがんになるのだと心得るしかないようです。生涯のうちにがんにかかる可能性は、2人に1人とまでいわれています。

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紅葉の季節になって各地から見ごろの情報が伝わってきます。紅葉とは、葉が落ちる前に葉の色が変わることをいいます。一般には落葉樹のものが多く、代表的なものとしてモミジがあります。厳密には赤色に変わるのを紅葉(こうよう)、黄色に変わるのを黄葉(こうよう、おうよう)、褐色に変わるのを褐葉(かつよう)と呼びますが、ともに紅葉と呼ばれています。紅葉にはモミジ、黄葉にはイチョウ、褐葉にはブナ、ケヤキなどがあります。葉がなんのために色づくのか、その理由は諸説ありますがいまだに明らかになっていません。

紅葉は日中の最低気温が10℃以下になると色づき始め、5℃以下になると一気に進みます。紅葉の条件には、昼夜の気温差が大きいこと、夏暑くて日照時間が長いこと、夏雨が多いこと、湿度が低く乾燥していることなどです。

ところでこの季節、神宮外苑の絵画館前の銀杏並木には多くの人たちが黄葉を楽しむために訪れます。11月27日の金曜日に初めて見ることができました。銀杏並木は大正15年(1926年)明治神宮外苑の絵画館が完成したときに植えられたそうです。ここにある建物は盛徳記念絵画館で明治天皇の遺徳を描いた歴史的、文化的に貴重な絵画が展示されています。維持管理はすべて明治神宮の予算で行われ、常に警察官によって警備されています。

明治神宮外苑の銀杏並木は青山通りの青山二丁目の信号が入り口にあたります。そこから絵画館を見ると、両側の銀杏並木はこの建物が中心になるように植えられていますが、遠近法によって実際より遠い距離に見えます。また1990年からライトアップされるようになりました。

銀杏並木の300mの間に146本のイチョウが9m間隔に植えられています。イチョウは公害に強いことで知られています。このイチョウは新宿御苑の在来木から採集したイチョウの種子を明治神宮内の種圃に蒔き、樹高6m内外に成長したものから植栽したそうです。しばらくはあざやかな色合いを楽しむことができると思います。

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とうとう1ドル86円台になりました。14年ぶりの高値をつけました。あれほど強かったドルが売られています。米国の超低金利政策の長期化するという観測で、ドルの先安観が広がったのです、ドルの受け皿として円に資金が流れ込み円高が加速したのです。これまでは金利の高いオーストラリアドルや高金利通貨の金などが受け皿になっていましたが、ここにきて金利の低い円買いが増えたのです。なぜならドルと円の金利が逆転したためです。

為替の市場では、日本政府と日銀の政策運営が円高を招いているという見方があります。この政策運営とは民主党が、これからは内需拡大をすると国際公約したことです。内需拡大をするということは円高を容認するということです。外需依存型の経済では円安が有利ですが、内需中心では原材料を安く輸入できるので円高が有利なのです。だからこれまでのように円高になっても円売りドル買いができないのです。ただ日本だけで対応しようとしても無理です。国際協調が必要です。

しかし、ようやく景気回復の兆しが見えてきたのに、これだけ円高になると 水をさすことになります。現にトヨタ自動車は、1円円高になると営業利益が250億円減ってしまいます。この様な状況なのに民主党政権はまったく無頓着なのです。財務大臣は就任早々円高になっても市場介入しないという発言を繰り返しました。副総理兼経済財政担当相は、デフレを認めただけで何も対応を示していません。韓国をはじめアジア諸国は自国の通貨の高騰を防ぐためドル買い介入を積極的に行っています。

新政権がこれまでに打ち出したのは補正予算2兆9千億円の執行を停止しただけです。マクロ経済運営の方向を示さないばかりか、予算の仕分けに熱中しています。テレビで映された様子はむなしさだけが伝わってきます。多くの国民は、仕分けでムダがなくなっていくと思っているようです。この仕分けはなんの判断基準もなく行われています。これは恐らく景気悪化に拍車をかけることになるでしょう。目先の予算を削ってもすぐに元へ戻ってしまうのです。日本全体の仕組みを変えないと良くならないのです。作ってしまった予算を削るのではなく、予算を作る前にしっかり議論をし、効果をきちんと見極めることです。しかもできる限り数量化をして途中で予定通り進んでいるかどうかが分かるような仕組みを作るべきです。これまでは予算を作ると後はなんのチェックしません。予算通りお金が使われただけが評価項目なのです。結果も事前の予測通りであったかどうかを示すべきです。仕分け作業は、作った予算で動き出しているのに、停めようとしています。これでは影響が出るのは当たり前です。

新政権は、国家ビジョンもなくスタートし、各人が勝手な判断で動き回っています。しいてあげれば反自民、脱自民がビジョンです。自民党の政策と反対のことが民主党の政策のようです。八ッ場ダムをはじめ公共事業の中断や普天間基地移設問題、郵政民営化など。あきれたのは、官僚の天下りを自ら行ったことです。

首相はリーダーシップがないばかりか、自身の献金問題ではずさんな会計処理について、他人事のような発言をしています。また普天間基地移設問題での発言はブレてばかりです。CO2の25%削減目標は、大手企業の海外流失を促進させてしまいます。

株価は円高や株安、デフレなど景気の足を引っ張ることばかりが続いている。そのことに対して新政権は対応策を何も示していません。一刻も早く成長戦略を打ち出し、不安感を払拭させるべきです。成長戦略の立案が優先順位の第一位です。

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未明の国会で、中小企業や個人の住宅ローンの返済を待つことを金融機関に促す、「中小企業者等金融円滑化臨時措置法案」が可決された。強行採決である。国会改革を期待していたのに、これまでとまったく変わりのない、お粗末な国会運営を露呈した。勝手に国会の会期日程を短く決めておいて、時間がないからといって強行採決をした。他の法案も早期採決を図る意向を明らかにしている。この裏には鳩山首相、小沢幹事長の政治資金疑惑がある。このことを国会で追求されると、政権維持に影響が出る恐れがあるからだと勘ぐられても仕方がない行動だ。

返済猶予制度は、中小企業や個人が借りた金を返す時が来ても延ばすことができるというものだ。
貸し手である金融機関にとって、その間収益が悪化することになる。返せなくなった借り手の住宅ローンを3年返済を延ばす法案に対して、利ざやが減ったり、返済を延ばす者が続出することを懸念する向きもある。そうなると、一旦返済猶予した貸し手に対しては、新規の融資をしなくなるだろう。金融相のスタンドプレーとしか思えない。

郵政民営化や官僚の天下りも元へ戻してしまった。これらは弱小政党との連立を組んだため、無理やり引きづられてしまったもので、民主党主導の政策にはみえない。

民主党は、選挙時に掲げた政策を実行するために財源確保に懸命だ。来年度の暫定予算を組んでみたら、なんと95兆円にも膨らんでしまった。一方税収は、景気悪化の影響を受け大幅に減収となる見込みだ。そうなると国の借金である国債を発行しなくてはならない。その発行額はなんと過去最大な額になってしまう。すでに先進国では最悪の財政状況にあるのにさらに増える見通しだ。

この悪循環を断ち切るには新たな国家戦略が必要だ。今、予算で一番多いのは社会保障費(27.5%)で次が国債費(19.8%)であるが、どれも削減が難しい。したがって成長戦略も重要だが歳出の見直しが必要だ。すなわち社会保障制度を始めとした国のあり方や仕組を根本からつくりなおすべきだ。少子高齢化社会やグローバル社会などはこれまでのし組みでは維持できなくなってきている。最も効果的なのは景気回復だが、雇用状況だけ見ても分かるように当面は望めない。

民主党の政策は、国民受けを狙った目先のものばかりであまり期待できない。財源確保のための事業仕分けにいたっては何の効果も期待できない。むしろ闇雲に予算を削っているため早い時期に影響が出ることは避けられない。新人議員を投入したり、1時間で判断するといった無茶な方法はスタンドプレーを狙ったものとしか思えない。しかも国家戦略がないため判断基準はそれぞれの担当議員の判断だ。財源確保にはこの方法では無理だし、むだをなくすというのならもっと現場に状況を把握し、効果の予測を厳密に行うべきだ。

このことはいたるところで問題を引き起こしている。普天間問題では首相の軽い発言が混乱を引き起こし、とうとうアメリカの駐日大使が自ら沖縄に出向いて、直接知事に会い調整を始めるという。それにしても沖縄の米軍普天間基地の移設をめぐる首相の発言のぶれはひどいものだ。

今月13日のオバマ米大統領との首脳会談の後の記者会見で、これまでの日米合意を重く受け止めていると大統領に伝えたことを明らかにした。また、時間がたてばより問題の解決が難しいとも述べた。しかし、首相は翌日には、2005年に日米間で合意した名護市に移設する計画を前提としない考えを表明した。結論を出す時期も、来年1月の名護市長選の結果にしたがって方向を見定めることだってあると述べた。

普天間基地の県外移設は、従来から民主党の主張であるためこれに縛られて結論を先送りしたいのだろう。しかし、首脳会談からたった1日で発言を変えてしまい、その後も発言のたびにニュアンスが変わる。また、外相との発言のずれも気になる。

政権交代は、これまでのしがらみを断ち切って新しい仕組みをつくることである。民主党の政策立案の基本は自民党と反対のことをやることだ。これでは改革はできない。当面新政権は混乱が続き刑期への悪影響を与えかねない情況だ。この混乱から抜け出すのは首相の強いリーダーシップしかない。とにかく日本が向かいべき方向を明確にすることだ。改革とは現状を打破して作り直すという二重のエネルギーが必要だ。国民の理解も不可欠であることも忘れないで欲しい。

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地球温暖化のニュースが毎日のように伝えられています。一般の人には身近に感じられないのかもしれませんが、温暖化の影響が次第にはっきりと現れるようになりました。例えば最近のニュースで、アフリカの最高峰でヘミングウェーの作品で知られるキリマンジェロの氷河の面積が、95年間に85%も縮小したことを報じていました。これは米オハイオ州立大学などの研究者の調査によるものです。山頂付近の氷河や万年雪は、1万年以上にわたって存在してきましたが、このままだと早ければ2022年には氷河は消滅すると予測しています。

地球温暖化は、洪水や干ばつ、酷暑やハリケーンなどの激しい異常気象を増加させたり、増強させる可能性が指摘されています。それでも個々の特定の現象を温暖化と直接結びつけるのは現在のところ非常に難しいようです。しかし、大局的に見ると、地球温暖化は地球全体の気候や生態系に大きく影響すると予測されています。

ところで地球温暖化とはどのようなことでしょうか。地球温暖化とは、地球の表面の大気や海洋の平均温度が長期的に見て上昇する現象のことです。地球の歴史の中で気候が温暖になったり寒冷になったりということが幾度となく繰り返されてきましたが、20世紀後半からの温暖化は意味合いが違ってきました。

もともと自然は、人間が手を加えても自分で修復する自己修復性という特性をもっています。具体的には草を刈っても再び芽生えて成長するようなことです。ところが自己修復性を上回って影響を与えているということです。すなわち地球の平均気温が徐々に上がり始め元に戻らなくなってきたのです。

地球の平均気温は、19世紀後半から科学的な観測をもとに測られ、統計が取られています。その結果によると、地球の平均気温は明らかな上昇傾向を示しており、1906年~2005年の100年間で0.74℃上昇しています。1℃も満たない気温の上昇が、地球に影響を与えているのです。しかも20世紀の後半になるにしたがって、上昇のペースは速まる傾向にあります。生態系や人類の活動への悪影響が懸念されまいるのです。

実は1980年代前半頃までは、地球は寒冷化しているというのが学界の定説であったことです。30年前にはまったく反対のことが考えられていたのです。その後1992年の国連の地球サミットで、定期的に気候変動枠組条約締約国会議(COP)を開催することが決められました。京都議定書はこのCOPが京都で開かれたときに作られた議定書(国家間の正式な合意文書)です。それまでに研究が進むにしたがって、地球は温暖化しつつあり、人類の排出した温室効果ガスが大きな影響を与えているということが現在の科学的な合意となっています。

18世紀後半から産業の発展とともに石炭や石油、天然ガスなどいわゆる化石燃料の大量消費や森林伐採によって大気中の二酸化炭素の濃度は200年前と比べて35%程度増加しました。これからもこれまでと同じような活動を続けると、21世紀末には二酸化炭素は現在の2倍以上になり、地球の平均気温は2100年には1.8度から4.0度上昇すると予測されています。

地球の温暖化の主因である温室効果ガスが、地球の平均気温を15℃に保っています。温室効果ガスとして二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロンなど6種類のガスが規定されています。
二酸化炭素は大気中に約0.03%しか含まれていない無色の気体で、化石燃料といわれる石油や石炭、天然ガスが燃焼することによって排出されます。この二酸化炭素が増えてきたために地球温暖化がおきているのです。

そこで人為的に制御が可能なものは温室効果ガスの削減ということから、1997年に議決された京都議定書に世界的な削減義務が盛り込まれたのです。

二酸化炭素の排出量を国別に見ると(2006年)、米国の21.1%、中国の20.6%、ロシアの5.7%、インドの4.6%、日本の4.5%などである。京都議定書は、2008年から2012年に先進国全体で少なくとも5%の削減を削減することを目標にしています。国別の削減目標は、EUが8%、米国が7%、日本が6%です。ところが全体の4割以上の排出量を占める米国と中国が議定書に
同意していないのです。

ところで日本の目標年次の2008年の温室化ガス排出量は1990年度比で1.9%上回ったことが環境省の調査で分かりました。景気の低迷で企業の生産活動が冷え込み、大幅に減少したが、家庭やオフィスの排出量が高水準だったためのものです。

日本での排出量の内訳は、製造業や建設業などの産業部門でのエネルギー消費量が占める割合は36%と最も高いが、次が事業所や商業、サービスなどの業務関連が18%となっています。業務部門の対策も欠かせません。

日本の首相が、今年9月22日、国連本部で開催された国連気候変動ハイレベル会合で演説し、日本の中期目標として、2020年までに温暖化ガスを、1990年比で25%削減すると表明しました。これにはすべての主要国の参加を前提としています。これに対して国内では、実現は非常に難しいという見方がある一方、ビジネスチャンスと捉えて推進すべきだという意見があります。現在ではどちらともいえない状況です。その理由はかなり多くの課題があるためです。

その一つが技術的に可能であってもコスト面での制約が大きいというものです。米国や中国が同意しないのも景気への悪影響や、企業の国際競争力がそがれることへの懸念があるためです。

実際日本の温暖化対策はかなり進んでいます。これまで環境問題というよりもエネルギィー問題として対応してきました。資源を持たない日本の企業にとって、石油価格の上昇は深刻な問題です。そのため省エネルギィー技術の開発や、他のエネギィーへの転換が積極的に図られてきました。したがって、これ以上の対策はかなりなコストを伴うことになると危惧されています。結局企業は海外への転出を促進することになり、雇用への影響も免れない恐れがあります。

このように環境問題は単に地球環境を守ることから、経済や雇用などへの影響、ひいては削減量取引の対象とした金融商品化の動きまであります。また途上国はこれを機会に先進国からの経済支援を期待するような思惑が見え隠れしています。そのターゲットは国連での多大な削減量を表明した日本です。その負担は国民に重くのしかかってきます。

現に鉄鋼業界は、京都議定書で温室化ガスの削減義務のない国で製鉄所を建設する検討を始めている。新日鉄がブラジル、JFEスチールがタイ、住友金属工業がインドなどである。企業は競争維持や生き残りに海外移転を視野に入れている。

ところで12月に開かれる国連の会議COP15での議定書の採択は難しい情勢になったと見られています。COP15までの最後の事務レベル交渉として開かれていた今回の作業部会で日本は温暖化ガスの25%の目標に加えて途上国への資金援助の新たな仕組みを提案し交渉の進展をはかりました。途上国からは25%の削減目標のうち何%を国内での対策で実現するのかや、日本が拠出する資金の額を明らかにするよう求める声が相次いだということです。日本からいかに多くの資金を引き出そうという思惑が働きます。

途上国は先進国からの多額な資金を求めています。途上国の意見は、先進国は、これまでの経済発展が地球環境を悪化させてきたのだから大幅な削減をすべきだとするものです。ところが先進国は、中国など経済発展を遂げた途上国に削減対策の強化を求めています。この対立は依然として厳しくこのことが来月開かれるCOP15で新たな議定書を採択することを難しくしています。まったく譲歩の姿勢がない対立の構造は基本的に変わっていません。日本の思惑に反して政治レベルの基本合意は結ぶにしても、詳しい内容は先送りされる模様です。このことからも日本の戦略性のなさや見通しの甘さがはっきりと見えてしまいました。

先日開かれたCOP15の作業部会で日本が提案した支援策は各国の失望をかいました。既存の制度を足し合わせた内容で、新たに提供する資金の規模も示されませんでした。どこが鳩山イニシヤチブ(提案)だという厳しい見方がされています。

日本の目標は米中を含めた主要国の合意が前提ですが、そんな主張はそっちのけで25%という数字が独り歩きしています。世界の関心は日本の資金をどう取り組むかです。欧州の日本の削減目標への高い評価は、世界最大の排出量取引市場で、日本国内で間違いなく削減できないことを見込んだ思惑があるからです。

以上見てきたように首相の思惑がどのようなものかまったく分からないが、地球温暖化は間違いなく進み、影響が出始めています。対策の難しさは地球全体で対応しないと解決できない問題です。
しかし、ドイツのように温暖化に対する意識が非常に強い国もあります。日本もかなり進んではいますが、家庭やオフィスの対策が遅れています。自動車や家電製品は対応が見られますが、この点が今後の課題といえます。

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