2010年03月

 
沖縄普天間基地移設問題と郵政改革の見直しで、ここ数日の間に政治と政治家の質の低さと悪さを露呈した。国民不在のまま政権を維持し、選挙に勝つためだけに動いているように見受けられる。

新政権は成立して半年を過ぎたというのに混乱ばかりが目につく。混乱の原因は、日本の将来像が描かれていないためである。この国をどのようにするかの方針と戦略がないため、各人が勝手な判断のもとに政策を進めらいるためいたるところで混乱が起きるのである。

民主党の政策立案の柱が、自民党政権と反対のことをやるということなのだ。これで日本がよくなるわけがない。沖縄の普天間基地移設も、なぜ現行案が駄目なのかの説明がないままに候補地を探し回っている。今度は唐突に郵政改革の見直し案が発表されが、亀井大臣による見直しの理由が小泉、竹中と反対のことをするためという。さすがにこれには閣内や民主党からも反対意見が出されている。

連立政権は、民主党が参議院で過半数を占めていないために組まれたもので、必ずしも政策が共通していたわけではなかった。そのため不協和音ばかりが聞こえてくる。

内閣支持率がこんなにも早く急落するとは誰も思っていなかっただろう。スタート時から政治とカネの問題が次々と明らかになった。しかし、まったくけじめをつけることもなくそのままになっている。ほとぼりが冷めるのを待っているかのようだ。そのほか予算編成では、当初から財源不足を懸念されていたが、無駄な公共事業を削って財源を確保するといっていたが、やはり多額な国債を発行するしかなかった。これも当初の表明とはまったく逆の結果になった。そして沖縄の基地移設問題と、郵政改革でも混乱を引き起こしている。いづれも連立を組んだ政党に引きづりまわされているように見受けられる。社民党も国民新党も次の参議院選挙のために存在感を見せるためになりふり構わない必死の動きをしている。

沖縄の普天間基地移設問題は、ますます混迷の様相を呈してきた。基地を県外か国外へ移転させるという公約は、地元に大きな期待を持たせた。その後、担当大臣が沖縄を訪れたり、米政府関係者と会談を重ねてきたがまったく進展を感じる情報は伝えられてこなかった。鳩山首相の移設について妙に自信のある態度が気になる。今日の党首討論では、自民党総裁の追及に追い込まれたためか、すでに腹案があると発言したことには驚かされた。首相の発言の軽さはかなり前から指摘されていたが、言葉の軽さだけでなく、前言を平然と翻すところはまったく理解できない。
 
ただ地元に対して県外移転に期待を持たせた責任は大きい。しかし、まさかと思うが、現状の普天間に基地を残すようなことにもなりかねないような気配すら感じる。いづれにしても自問との同意がないままに移設はできない。

さらに郵政事業の見直しでも迷走したが、結局首相一任で落ち着いた。しかし、見直し案に対する批判は大きい。なぜ国民新党は郵政民営化に反対をしたのか。国民新党は特定郵便局長会と労働組合の支援を受けているからである。郵便局は、全国に約1、300の普通郵便局と約19、000ある特定郵便局、それと業務の委託を受けている約4,500の簡易郵便局がある。関係者は約30万人とも言われている。

郵政グループ以外支持基盤を持たない国民新党は、この票田を守るために今回の見直し案を出したのだ。この案は露骨に郵政グループを守ろうとするものだ。亀井大臣は金融相も兼ねているにも関わらず、郵政グループ会社を守るため既存の民間金融機関が不利になる案を実行しようとっしているのだ。

もっとも異常なのが、ゆうちょ銀行の預入度額を1,000万円から2,000万円へ、かんぽ生命保険の保険上限額を1,300万円から2,500万円に引き上げることだ。これによって地元の信用金庫や信用組合は影響を受けると言う見方が一般的です。おそらくその通りだと思います。さらに20万人の非正規社員のうち10万人を正規社員にするというものです。このことによって人件費が4,000億円増える見通しだ。また、郵政グループ間の取引で発生する約500億円の消費税は免除するというものだ。これは結果的には税金を投入するのと同じことだ。

さらに課題は、郵貯銀行の貯金額177兆円の約8割が国債で運用されているが、国債以外への融資となると、まず運用のノウハウがまったくないうえに融資先の審査能力もない。経験を積んできた金融機関でも融資には慎重だ。そのため多額な損失を受ける恐れがある。そうなると再び国債へ回され、むだな公共事業が続けられる恐れがある。郵便貯金に簡易保険を合わせると資金は300兆円にものぼる。この運用には相当な危険を伴う。結局国債を買うことになるのではないのか。

今回この問題で首相がこの案を認めてしまったのは、閣内不一致が表面化したため早期に収束せざるを得なくなったのだろう。それと亀井大臣は小沢幹事長には事前に了解を取り付けていたという。これも切り札になったものと思われる。ようするに、かなり強引に押し切られてしまったのだ。小泉、竹中への報復という見方もある。今回の見直し案は、結局国民につけが回ってくるという見方が正しいのだろう。

新政権への期待は、大きな改革であったものが、次第に自民党政権時代と変わらないのではないのかという疑問と、もっと悪いほうへ向かっているのではないかという不信感が強まってきた。
政権を維持するために連結政権を組み、選挙に勝つためにバラマキをし、陳情を受け入れながら支持団体を組織化している。このことが国民の将来に対する不安感を一層強化しているのだ。このような見通しのない混乱に大して、国民は次の参議院選挙でどのような判断を下すのだろうか。それにしても政治とカネの問題などについて民主党内からなんら意見が出てこないのも異様な感じがする。
 
 
いづれにしても政権に対する期待は、雇用の確保と安定した所得、それに社会保障の整備だ。将来に対する不安や不透明感が閉塞感をもたらしているのだ。政治は国民に夢や希望を持たせ、それを実現させる社会をつくるべきだ。政治や政治家のレベルや質を上げるためには、ひとえに国民は政治への関心を高め、政治を注意深く見守ることだ。
 

鳩山内閣の支持率が、組閣後半年を待たずに40%を切った。発足当時の支持率は80%前後と圧倒的な支持を得て政権交代を果たしたが、あっという間に期待を裏切ってしまった。当初から新内閣への不安感はあった。第一は、新政権が自民党への反発から得た支持であったことや、マニフェストの内容に効果に対する疑問点が多く、特に財源の裏付けがまったくなかったことなどである。

そのほか首相のリーダーシップの弱さや小沢幹事長との関係なども不安要素であった。このときから不安感が期待感を大きく上回っていた。そんなときに政治とカネの問題が表面化し、特に幹事長の秘書が3人も逮捕されたことは衝撃的であった。しかもこのことを党を挙げて隠そうとしたため民主党の自浄作用のなさに国民は辟易としてしまった。

半年近く経った新政権の政策は、どれをとっても中途半端で曖昧のままである。高速道路の無料化、子ども手当の支給、公共事業の見直し、公務員制度改革、農家のあの所得保障、CO2削減などどれも結論がでないままである。特に普天間基地移設問題は連立政権のもろさを露呈して右往左往してばかりだ。

新政権の一番の問題点は、この日本のあり方を示す理念がないままに、個別の政策に走りすぎていることだ。全体像がないままに個々の政策を議論しても結論はでない。基地問題も、将来の国の安全保障をどのように考えるかが重要だ。当然アメリカとの関係や東アジアの関係も考慮しなくてはならない。

子ども手当の支給も目的が分からない。経済効果なのか、家庭への経済的な支援なのか。どうもこのカネのバラマキ具合をみていると社会主義国家を目指しているのかと思ってしまう。幹事長は陳情の窓口を幹事長室へ一本化したことや、民主党議員に政策より参議院選挙を優先するべきと檄を飛ばしている様子をみると、首相を超えた独裁政治へ走ろうとしているのかと見間違うばかりである。しかも選挙で勝ってどのようにしようとしているのか幹事長からはビジョンがまったく示されていない。

とにかく新政権に対する問題点を挙げればきりがない。この問題に対処するには内閣支持率調査が効果的だ。日本の国政は議院内閣制と言って、内閣は衆議院に新任されていれば存続できる。したがって4年に一回の選挙によってのみ国民の意思は伝えられる。しかし、マスコミによって行われている内閣支持率調査は政権に大きな影響を及ぼすようになった。

いづれにしても過去から現在に至るまで政治とカネの問題は改善されてきていない。さらに思いつきのようなお粗末な政策立案や、支持団体や連立政権を重視するような政治運営はいい加減断ち切らなくてはならない。民主党が危うさを見せているというのに、野党の自民党は国民の支持を得る決め手がないままだ。

今大切なのは景気の回復だ。このことによって雇用を確保し、所得を上げることだ。外需より内需といっているが、内需拡大の具体的な戦略を示すべきだ。外需では中国やインドなどとどのように付き合うかが課題だ。製造業に負担を負わすような政策をとるべきではない。幸い国民が政治に対する関心を示してきたが、さらに参議院選挙では国民の強い意志を表現すべきである。

それにしても小沢幹事長は、80%が幹事長を辞めるべきだという世論調査の結果が出ていても居座って選挙活動を続けていることに疑問を感じる。このような結果が出ても民主党議員は相変わらず黙ったままでいる。この異様な状態はまだ続くのだろうか。

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