菅首相は、国会をもてあそんだだけでなに一つ成果を残さなかった。地震、津波、原発事故が同時に起き、復興にどの程度の時間と費用がかかるかも分からない。そんなときに首相は何もしないでただ権力にしがみついていた。この5ヶ月間を無駄に過ごした責任は大きい。しかし首相はその責任をまったく感じていない。この非常時に官房長官とサッカー観戦に行くのだからあきれてしまう。
 
次の民主党の代表を選ぶための時間はわずかなものになってしまった。どさくさにまぎれてなのか代表選にはたくさんの候補者が名乗りをあげた。菅首相を見ていてあの程度なら自分にもできると思ったのだろう。しかしどの候補者も首相の姿をイメージできない。
 
菅首相によって民主党には政権担当能力がないことを嫌というほど見せ付けられた。この間に失った民主党への信頼をどのように取り戻すのか。しかし今回の代表選では政策の争点はなく、数を競うだけになっている。これだけの数の候補者をどのようにして評価し投票するのだろうか。政策の違いを出せるのだろうか。
 
そのような中で小沢一郎が復権を狙って動いている。小沢は政治資金規正法違反で強制起訴となったため党員資格停止処分を受けた。ところが代表選にるととたんに各候補者から撤回するような動きが出始めた。判決が出たわけではないのにである。これでは政治に対する不信感が強まるばかりだ。
 
現状のネジレ国会では野党との協調が欠かせない。自民党政権時から首相が1年交代をしてきた背景にはネジレがある。当時民主党はとにかく自民党政権に対して反対の態度をとってきた。今度は逆の立場になった。菅首相は谷垣総裁に電話で連立政権を申し入れた。電話でというのもどうかと思うが谷垣総裁に断られると責任を分担しないのかと逆切れしたという。これでは自民党から信頼を得られない。
 
首相はこれまでに組織を動かすという経験をしたことがないのだろう。首相に強いリーダーシップがないため民主党内ははばらばら状態で、ほとんどの議員が菅おろしを願っていた。首相は唐突に脱原発宣言をして、野党だけでなく党内からも批判をされると個人的な見解だと言い訳をした。党内でまったく議論をしないのだからあきれる。これでは党はまとまらない。
 
玄海原発の再稼働のときは経産相が地元に出向いて協力を要請しているときに、突然ストレステストを再稼働の条件に加えた。これにはあきれた。経産相も怒ったが地元も怒った。当然だ。これでは政権運営はできない。エネルギー政策の立案は経産省のエネルギー庁の担当なのに菅首相は、玄場国家戦略担当相に指示をした。さすがにこれにはベテラン閣僚が諌めたがこんあことも分からないのだ。
 
知識のなさでは財務大臣当時、国会の予算委員会で乗数効果や消費性向の質問を受けると答えられず質疑が中断する場面があった。また首相になってから国債が格下げされたことを記者から聞かれると、そういうことは疎いのでと答えて新聞に書きたてられた。
 
ところで大震災の復旧と福島第一原発の収束には役人の力が欠かせない。しかし首相は官僚を使おうとしない。このようなときにこそ各省庁の力が必要だ。ところが組織間の調整の要となる事務次官会議をやめてしまったのだ。地元はその影響を受けて復旧は遅れてしまっている。
 
外交では前任の鳩山もひどかった。長年培ってきた日米関係を沖縄普天間基地の移転問題で危うくさせた。その鳩山は一旦引退を表明しながらあっさり取り消してしまい、今は代表選で小沢の尻馬に乗って動き回っている。
 
その代表選で小沢は存在感を示そうとしている。小沢は党内で最大グループを抱えている。したがって代表選の候補者の動きを見ながら支持者を選別している。候補者は小沢にすりよっているが、仮に小沢の支持で代表に選ばれたとするとその後は小沢に操られることになる。その小沢は政権公約を守ろうとしている。バラマキの政権公約は財源不足から実現は無理ということから見直しをすることになっている。バラマキを増税で実現しようとするのだから国民はたまったものではない。
 
代表選の候補者の実力はまったくの未知数だ。野田財務相は財務省のいいなりの増税論者。ところが最近は、選挙間近になってその主張を弱めている。また大連立を表明した。民主党内がまとまりを見せていないのに連立が成り立つわけがない。民主党は、旧社会党議員から自民党議員までの集まりだ。指導力を発揮できるリーダーがいないのだからまとまるわけがない。菅首相がその典型だった。それに自民党は絶対に連立に乗ってこないだろう。
 
現在民主党の国会議員は407人。うち9人が党員資格停止中。したがって民主党の代表選は398人の投票によって行われる。民主党には11のグループがある。自民党のように派閥としてはっきりと分かれているのではなく、複数のグループに参加している場合もあるようだ。
 
日経新聞によると2011年8月時点で小沢グループが約130人、以下、菅50人、前原50人、旧民社党40人、鳩山40人、野田30人、旧社会党30人程度と報じていた。これを足すと370人になる。
 
小沢グループは2009年8月の総選挙で当選した新人議員が多数を占めているが、政策的な集まりとはいえない。代表選で小沢が誰を支持するかによって情勢は決まる。反小沢の姿勢を見せていた前原までが小沢の協力を要請したところに民主党の脆さがある。
 
小沢は代表選の支持で政権公約を守ることを条件にしている。すでに政権公約は見直しをすることに決まっているのに、小沢はこれおを押し通そうとしている。代表に近い前原が選ばれたとしてもこのことが大きな障害になることは間違いない。
 
菅首相は居座り続けたが、今度は民主党が居座り続けようとしている。なんといっても選挙があれば間違いなく大敗するからだ。次期首相は党内をまとめる強いリーダーシップと野党との協調姿勢が必要だ。
 
とのかく震災の復旧の遅れを取り戻し、福島第一原発を早く収束させることだ。さらに円高は長引きそうだし、また国債の格付けが下げられた。財政再建は急務だ。さらに日米関係を中心とした外交の再構築も急がれる。沖縄の普天間基地の移設はメドがたっていないままだ。そしてエネルギー政策の策定だ。エネルギー政策を策定する前に再生エネルギー特別措置法を成立しようとするのだからわけが分からない。
 
鳩山、菅の失敗を繰り返さないように党内での議論を盛んにするとともに、数に引っ張られないよう政策本位の政権運営をすすめて欲しいものだ。