11月27日に大阪で知事と市長のダブル選挙が行われた。この選挙で維新の会の支持が民主や自民党を上回ってうえに民主、自民の支持層から40%から50%の票が流れたことが分かった。維新の会は既成政党のような組織からの支援は受けていない。
選挙戦で橋下候補は、対立候補者や支援する既成政党に向かって、何を守ろうとしているのか分からない、現状を変えたくないのかと激しく批判した。橋下候補に投票した有権者に最も求めていることを聞いてみると、59%が大阪再生と答えている。既成政党への不満もあるが変化への期待が高いことがよく分かる。
今回の選挙に対して各党の動きをみると、民主党は都構想の内容が固まっていないとして積極的な動きをみせていない。しかし国政への大きな足がかりをつくられたことへの危機感を募らせている。民主党は政権交代後地方選挙でことごとく敗退している。次期衆議院選挙でも苦戦が予想されるだけに維新の会の躍進に大きな脅威を感じている。民主党は選挙戦で対立候補を支援しただけにすぐに態度を変えるわけにはいかないのだろう。しかし今日野田首相は、参議院の予算委員会で都構想に関する質問に答えて、政府内でも具体的な検討に着手するとの方針を示した。
自民党も対立候補を支援したが、これだけ差をつけられると体裁など構っていられないのが本音だろう。維新の会には自民党から移った議員が多いこともあって、自民党の国会議員の間では維新の会との協力関係を進めるべきとの声が多い。
対立候補の支援の中心になっていた自民党大阪府連。会長は衆議院議員。都構想は大賛成、国会議員による議員連盟を年内にも立ち上げ都構想を検討すると述べた。今後府選出の国会議員にも参加を呼びかける方針。石原幹事長も府連が中心になって構想を練ることに同意したという。民意が賛成なら真剣に考えるべきと方針転換したのだ。
橋下候補は市長当選直後の会見で、都構想実現に向けて年内に国会議員が動かなければ近畿圏で国政に候補者を立てて勢力をつくり、法改正を実現すると述べた。このひと言が効いたのか、既成政党は維新の会との連携に向けて動き出した。
自民党大阪市議団は28日総会を開き、大阪都構想反対の姿勢を撤回し、推進に向けた議論に応じることを決めた。これまで大阪都構想は大阪市を解体するものだと反対の立場をとっていた大阪市幹部。市議団は今回の選挙で都構想は民意と受け止め、具体的な内容が提示されれば賛成することもありうると述べた。こうなると市議会の状況は変わる。市議会の議員定数は86。このうち維新の会が33議席、自民党は17議席、あわせると50議席で過半数の43議席を上回る。
橋下候補は選挙前から大阪市について既得権益の塊などと批判を繰り返してきた。当選直後の記者会見でも民意を無視する職員は市役所から去ってもらうと語った。公約は都構想のほかに政治の関与を強める教育基本条例の制定、わけの分からない補助金の見直し、およそ3万9千人いる職員を1万2千人削減、市長退職金の5割カット、市営の地下鉄とバスの民営化などである。
今年の夏、関西電力は東日本大震災の影響で関西地区も節電に要請したことに対して橋下候補は拒否をした。関西電力が安易に節電を要求する姿勢を批判したのだ。電力不足の詳細の説明を求めたが関西電力はそれに応えなかった。また大阪市は関西電力の筆頭株主。今後脱原発の圧力をかけていくものと思われる。
これまで橋下候補の姿勢に激しく反発してきた大阪市の幹部も態度を変えた。、現職市長が落選したうえに橋下候補が大量得票で当選したため、民意は変化を求めているとして、すっかりあきらめ顔のようだ。前回の市長選で平松市長は37万票を獲得したが、今回橋下候補はその2倍の75万票を集めた。
それに橋下候補の手法は、府庁で目の当たりにしているから分かっている。28日に開いた市の幹部会では新市長の受け入れが主題にし、新市長の意向を優先することを取り決めた。選挙戦で市役所をぶっつぶと叫んでいたことが効いたのか。民意の強さを改めて知らされた。
橋下手法と公約についていろいろ批判がでている。府と市はこれまでと違って協調体制が取れるようになったのだからいまさら都構想は必要ないという指摘もある。しかし市民は橋下候補の変革に対する姿勢と強いリーダーシップを支持している。
公明党は2009年の衆議院選で惨敗した。次期衆議院選で大阪地区で医師の会が候補者を擁立すれば影響は避けられないとみている。みんなの党は衆議院選と参議院選で善戦している。衆議院で4人、参議院で10人の国会議員を抱えている。維新の会と連携して第三極としての位置を狙っている。現職の衆議議員は4人とも関東を地盤としているため対立はしない。
既成政党は地域政党の人気にあやかろうとしているが、これでは政党の中味は何も変わらない。結局国民から支持を受ける政策を立案できるかどうかだ。いちまでたっても回復しない景気、財源不足で不安定な社会保障制度、主導権をとれない国際関係など課題ばかりだ。維新の会は一人の若いリーダが、変化を旗印に、明快な政策をもって引っ張っているのだ。政権の柱が党内融和と野党協調では支持が拡大するわけがない。