民主党の代表と自民党の総裁が決まった。両党の代表選挙の盛り上がりは対照的だった。民主党は首相と3人の閣僚経験者が立候補し、首相が再選され。自民党は閣僚や党執行部経験者の5人が立候補し安倍候補に決まった。
民主党が新宿で初めて行なった街頭演説会では声が聞こえないほど激しいヤジが飛んだ。民主党の現状を表している。3年前には圧倒的な支持を得て政権交代をしたが期待は大きく裏切られた結果というえよう。
民主党の立会演説会はわずかな回数で終わった。再選が確実視されていたこともあってか、首相は公務優先を口実に演説会の開催は消極的だった。
しかも3人の候補者は反野田姿勢を鮮明にし、野田批判を行なった。これでは演説会は逆効果になってしまう。だれだって内輪もめを見せられればうんざりするにきまっている。結局首相が68%近くの支持を得て再選された。
自民党は19カ所で街頭演説会を行った。当然演説の内容は野党批判になったが、政権奪還は間違いないとみられていることもあって関心を集めた。選挙は石破候補が地方票を55%確保したが、過半数に至らなかったため国会議員で決選投票が行われ、108対89で安倍候補が選出された。
かつて自民党は派閥政治であったが、今回の総裁選では派閥が機能しなかった。また長老の動きもみられたが結局無視された。メディアは、自民党が古い体質を引きずっていると言いたいようだが体質は変わっているようだ。
メディアは何事につけて問題があるかのような書き方をする。そのほうが売れるからだ。一部の反対意見を取り上げて大げさに書く。なにもしていないうちから安倍総裁と石破幹事長との関係が悪化するというのだからあきれる。
民主党は輿石幹事長が再任される。政調会長には細野環境相、国会対策委員長には山井国会対策副委員長が昇格した。また幹事長代行には安住財務相が起用される。
党執行部の人事は、完全に選挙向けとみられている。輿石幹事長の留任は解散を遅らせるためとの指摘もある。解散を遅らせても状況がよくなるわけではない。かえって逆効果だ。選挙で民主党は大きく議席を減らすことになるだけ。
民主党は70人を超す離党者を出した。選挙が近づくに従ってこれからも離党者が出るもようだ。後8人が抜けると国民新党を合わせた与党は過半数を割ってしまう。選挙基盤のない新人議員は民主党にいては当選の可能性は低い。日本維新の会を頼りにするしかないようだ。
日経新聞が行った調査によると、次の選挙で投票したい政党は、自民党の35%、民主党の14%、日本維新の会の12%となっている。この調査は、注目を浴びた自民党の総裁選直後に行っているが、総裁選挙が注目を集めたのに対して民主党の代表選は盛り上がりに欠けた。このことが影響を受けたものと思われる。
しかし国政に初参加の日本維新の会が12%と2位の民主党の14%に迫っていることは興味深い。しかも4位を大きく引き離している。4位は3%で、国民の生活、公明党、みんなの党、共産党の4党となっている。
政党支持率では自民党が大きく上昇して37%、民主党がやや下がって19%となっている。8月の調査で無党派層が27%だったが、今回は17%に下がっている。その分が自民党支持に回ったのだろう。
民主、自民両党の党首のどちらが次期首相にふさわしいかとの問いでは、安倍総裁が41%で野田首相の28%を引き離している。
これらの結果を見ると日本維新の会への期待が大きいことがうかがえる。既成政党への不信感のあらわれだろう。日本維新の会は次の衆議院選挙で300~400人の候補者を立てるようだ。
ただ日本維新の会の人気も陰りが見え始めている。日経新聞が8月に行った調査では日本維新の会に期待するが59%、期待しないは32%であったが、今回の調査では期待するが45%に減って、期待しないが44%に増えている。いろいろな情報が入ってくるに従って期待だけでなく不安が入り混じっているのだろう。
2009年に政権交代をしたとき民主党に対する期待が大きく膨らんだ。民主党の国会運営や政権運営、政策立案、党運営などの能力などほとんど情報がないままに選択をしてしまった。それはあまりにも自民党がひどい状態だったためだ。
当時自民党政権は、小泉政権の後、安倍、福田、麻生と首相が1年で交代していた。2007年の参議院で野党が半数を占めるネジレ状態になった。国会は民主党の反対にあってほとんどの審議は進まなくなってしまった。そのうえ閣僚の不祥事や失言などが続いた。そのため2009年の衆議院選挙で「まだマシだろう」という思いから自民党への批判票が民主党へ投じられたのだ。
既成政党が不満だからと言う理由で投票するのは同じ間違いをする。日本維新の会は国政に参加したことすらない地域政党なのだ。衆議院選挙には、そのことを考慮して投票すべきだろう。
国会では優先すべき法案がある。まず赤字国債法案を成立させなくては地方自治体などに金がとどかなくなってしまう。また最高裁判所から違憲状態と指摘を受けている一票の格差を是正しなくてはならない。民主党は、一票の格差是正と議員定数の削減や選挙制度改革を一体的に成立させようとすることは止めるべきだ。選挙制度改革は時間をかけて検討すべき事項で、一票の格差是正と切り離すべきだ。
民主党が解散を引き延ばそうとすれば、次の選挙でさらに議席を失うことになるだろう。このことを肝に銘じるべきだ。