全国の大手デパートや有名ホテルのレストランで、表示と違う食材が使われていたことがわかって問題になっている。実際は違うのに本物のように見せようとしたことから偽装という言葉が使われる。それが食材だったことから食材偽装という言い方がされている。
食材が偽装表示されていたことが次々と明らかになっている。メニューとは違う食材を使って利用客をだましていた。利用客は、まさか信頼していたデパートやホテルのレストランに裏切られるとは思っていなかっただろう。なんおために偽装していたのか。いろいろな言い訳がされているが、利益を増やすためではなかったのか。
2008年にヒルトン東京のフランス料理店で、料理長の指示で山形牛を高級黒毛の前沢牛と偽っていたことがわかった。山形牛は安定して仕入れができ、品質が同じ程度なので問題ないと説明したという。このレストランはミュシュランガイドで二つ星の格付けをされていたというのだから驚きだ。
レストランのメニューやガイド本にには無農薬野菜を使っていると書かれていたり、食材ごとの産地が表示されていた。しかし発注責任者だったフランス人のシェフは、無農薬野菜や産地の指定をしないまま発注していた。実際には農薬を使った野菜や産地が違う食材が使われていたことがわかった。
これに対して公正取引委員会は、景品表示法違反で排除命令を出した。これは商品の品質が実際より優れているとか、値段が安いとか消費者が誤解するような不当な表示をした場合、表示を撤回したり再発を防ぐことを命じる行政処分。従わない場合は2年以下の懲役刑か、300万円以下の罰金刑が科せられる。このレストランは閉店した。
2010年4月にホテルグランヴィア京都ではメニューには京地鶏の肉を使っていると表示をしていたが、実際はブローラーを使っていたことがわかった。そのため公正取引委員会から移管を受け新設された消費者庁が措置命令(排除命令と同じ)を出した。
今年の6月に東京ディズニーリゾート内の3つのホテルで車エビと書きながらブラックタイガーを使い、少なくとも1400食を提供していたことがわかった。またプリンスホテルでは全国の16の施設のレストランでメニューには国産牛と書きながらチリ産牛を出していた。ホテル側の言い訳は、仕入れ部門と調理部門で情報を共有されていなかったというものだった。レストランの管理体制がいいかにいいかげんなものだったかがわかる。
このことがあって阪急阪神ホテルが社内調査を行ったところ偽装表示をしていることがわかった。10月22日にこのことを公表したが、ホテル側は、意図的なものではなく担当者の知識不足や理解不足のよるものと釈明した。
その後社長が記者会見を開いて謝罪したが、これは「偽装」ではなく「誤表記」だったことを強調した。この問題は不適当ではあったが違法ではないと開き直っているようにきこえる。まるでたいした問題ではないと言っているようにきこえた。メディアはこの説明に強く反発した。そこでホテル側は再度調査し偽装があったことがわかり社長は辞任した。
メニューと違う食材は、芝エビ表示しながら価格の安いバナメイエビを使っていながら芝エビと表記し、普通のネギなのに九条ネギと表記したり 既製品を使いながら手ごねハンバーグと表記していたことなどだ。ホテル側は、食材を替えた調理部門がメニューの表示を担当するサービス部門に伝えられていなかったためにおきたことと説明した。
実際の食材と違う表示をしたことについて、この程度の違いは許されるものと勝手に判断をしたのだろう。表示は利益をあげるための意図はなかったのだから「偽装」ではなく「語表記」という考えのようだ。メディアは少しでも表示の食材が違えば「偽装」と主張している。
利用客にとっては、「偽装」でも「語表記」でもどちらも関係ない。理由はどのようであれ、だまされたことに違いはない。11月7日には大丸松坂屋、東急、松屋、丸井、東武で判明し、これで三越伊勢丹、そごう・西武、高島屋、小田急の主要9デパートにまで広がった。偽装表示をしていないデパートやホテルを見つけるほうが難しいくらいだ。
デパートの惣菜売り場でも不適切表示が行われていた。フランスの高級食品店のフォション名が付いた車エビのテリーヌにブラックタイガーを使っていた。このテリーヌはおせち料理にも使われていた。
ブラックタイガーはクルマエビ科に属し、形や味が似ている。それに値段も安い。車エビと違ってブラックタイガーは冷凍されて輸入されている。車エビは甘みや風味が強いのが特徴。テリーヌは
細かく切って、すり身にしているため専門の業者でも見分けることは難しい。ましてや利用客にはわかりにくい。
なかでもバナメイエビを芝エビと表示し、ブラックタイガーを車エビと偽っていたことが目立つが、芝エビや車えびは高級食材として扱われている。値段は卸売市場で倍以上の開きがある。バナメイエビとブラックタイガーは冷凍されているものが多く、タイやベトナムなど東南アジアから輸入されている。
当然エビの違いは鮮魚店も調理人もわかるはずだが、料理されると一般の人にはわからにというのが専門家のみかた。バナメイエビは東南アジアで養殖され冷凍になっている。芝エビは天然ものは数が少なく量も安定していないので年間を通して確保することは難しいとされている。それだけに値段は高い。
牛肉は産地をごまかしていた例が多い。成形肉を使っていた例もある。成形肉は細かいくず肉や内臓肉を軟化剤で柔らかくして決着剤で固め、形状を整えた肉。食べた感じや味は普通の肉と遜色がなく、膨らんで量も増えるのでコスト面で効果がある。ほかにも牛肉の赤身に牛脂や食品添加物などを注入し霜降りのように見せている牛肉もある。
成形肉は人工的に肉質を変化させた加工食品であるとしてメニューにはその旨を記載することを法律は求めている。しかし加工技術の高度化によって調理されたものを一般の肉と区別できる人は少ないといわれている。
生肉としてスーパーや肉屋で売ることは禁じれているが加工食品としてなたば売ることができる。ファミレスや焼肉店などの外食産業では利用されている。11月8日洋菓子メーカーの不二家は、63店舗で成形肉と表示しないでステーキとして販売していたことがわかった。
11月5日、奈良県は近鉄系の旅館、三笠が食材の産地などの表示を偽装していた問題で責任者呼んで聞き取り調査を行った。また12日には消費者庁が立ち入り検査に入った。
奈良の高級旅館、三笠ではオーストラリア産の牛肉の成形肉を使ったメニューを和牛朴葉焼きと表示していた。車エビのメニューも輸入品のブラックタイガーで代用していた。調理担当者の認識不足で意図的な偽装を否定した。しかし、その後偽装であったことがわかった。この旅館は、一泊20万円以上で 県内の飲食店やホテルの掲載が始まったミシュランガイドで3年連続ホテル部門の格付けを受けている。
一旦メニューに表示をすればその妥当性が厳しく問われるのは当然。不当表示を行ったと認定すれば消費者庁は「景品表示防止法」で事業者その行為を止めさせ従わなければ3億円以下の罰金を科すことができる。ただこの法律は問題がおきてから処罰する事後規制でしかも消費者がだまされた、もしくは事業者からの申し出がなければ見つけることはできず罰することもできない。それに消費者はだまされたことが気づくことができるのか、なかなか難しい。
ブラジル産の鶏肉を大和肉鶏とした産地偽装は、景品表示違反にあたる疑いがある。またおせち料理にぼらの卵を使っているとした「からすみ」にタラやサメの卵を使っていた。これは日本農林規格(JAS)法違反の疑いがある。
食品の表示は農林物質の規格制定のための「JAS法」、公衆衛生のための「食品衛生法」、「健康増進促進法」できびしく規制されている。対象はいずれも生鮮食品や加工食品の表示についてで、レストランのメニューは対象になっていない。原材料の誤った表示については主に「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)の不当表示が問題となっている。
もはや罪の意識は感じられなく、どうせ食べてもわからないだろうと思っていたのか、わかってもたいしたことはないと高をくくっていたのだろうか。いかにも消費者を馬鹿にした行動だ。
さすがに政府も動き出した。全国のホテルや百貨店での食材の偽装表示が相次いでいr問題で、政府は11日、農林水産省や国土交通省など11の関係省庁を集めて緊急会議を官邸で開催した。
消費者庁が中心となって監督官庁などからなる「食品表示等問題関係府省庁等会議」を発足させ、た。政府として問題に取り組む姿勢をみせた。
管轄する業界に調査をし、11月末までに調査結果をまとめたうえで次回会議で景品表示法のガイドラインを策定する見通し。大手宅配業者が保冷サービスで預かった荷物を常温で仕分けていた問題も含めることとした。しかし食材偽装のケースが多すぎる。
農水省が外食業界 国交省が宅配業界など各省庁の管轄業界に偽装表示がないかを調査させ問題があれば表示の是正や適正化を求めていくそうだが、そんなことで改善できるのだろうか。
日本の和食がユネスコの無形文化遺産への登録が予定されており、事前審査を通った。素材を大切にする心や丁寧な調理法は、世界から高く評価されることになった。しかし今回の問題は無形文化遺産に水を差すものだ。