連日都知事がテレビで大金を受取った言い訳をしている姿が映し出されている。なんとも哀れで、情けない。これが首都東京の知事とは恥ずかしい。絶対的な権限を持つ知事が、利害関係のある医療法人から5000万円という大金を受け取ったためだ。どんな言い訳をしても通らないだろう。現金を受け取ったのは間違いなく事実なのだ。

都知事選挙の直前に当時副知事だった猪瀬候補者が,あろうことか医療法人「徳洲会」から5000万円を受けとったが、妻以外は知らせないまま貸金庫に保管していたことがわかった。

徳洲会は都内で二つの医療施設を運営している。2005年に開設した病院には、2008年度以降、東京都から救急事業などで1億5千万円弱の補助金や委託料を受け取っている。また昨年5月に開設した介護医療保健施設には、2010年度から3年間で8億1千万円強の補助金を受け取っている。さらに2015年には新しい病院が開設される予定で、昨年10月に都から開設許可を受けている。

補助金は東京都が行政上の目的を達成するため、企業などに対して、反対給付を受けることなく現金を給付するものである。返さなくて良い金。このように都と徳洲会とは利害関係にある。

都には一般職員が利害関係者から利益供与を受けた場合は懲戒処分になる厳しい規定がある。過去には業者から99万円を無利息で借りて、返済した職員が懲戒免職になったり、50万円の借金を申し込んだ職員を停職処分になったことがある。借金も利益供与とみなされている。

知事は絶対的な権限をもつことから倫理面で一層の厳しさが求められる。ところか、利害関係にある医療法人から大金を受け取っていたのだからあきれる。これでは職員に示しがつかない。

徳洲会もおかしなことをしている。知事に銀行振り込みではなく、現金で渡していた。記録に残ることを嫌ったのだろう。この金が裏金と見られても仕方がない。いずれ東京地検特捜部が明らかにするのではないか。

悪いことはできないもので、金を渡した医療法人の前理事長の次男、徳田衆議院議員にかかわる選挙違反の疑いで、身内など関係者6人が逮捕され、家宅捜査を受けた。その捜査の中で猪瀬都知事に5000万円を渡していたことがわかってしまった。選挙違反がなければ5000万円の存在は誰にもわからなかったはず。突然明らかになった大金が、どのような目的で渡されたのかで騒動が始まった。

11月22日の午後1時過ぎ、都知事は、この問題について初めて記者団に説明した。選挙前に徳洲会の徳田前理事長に面会したことを明らかにし、さらに「資金提供という形で応援してもうことになった」と説明した。そして「資金提供という形で応援してもらうことになった」こと、5000万円が選挙資金だったことなどをと話した。

ところが2時間後に再び記者会見を開いた。そこでこの発言はまずいと思ったのか、「選挙の資金ではない。個人の借り入れとして、たまたま借りた」と前言を言い換えた。その後は個人の借り入れであることを強調している。
  
このことについてメディアは次のように伝えている。次男の徳田議員が父親の前理事長に「知事が余ったら返すのでまずは1億円をお願いしたい」と言っていると伝えると、前理事長は「5000万円で対応しろ」また「足がつかないよう議員会館で渡せ」などと指示したとある。そこで徳田議員は議員会館の事務所で知事本人に直接現金で5000万円を手渡した。

前理事長が、わからないように渡せと言ったが事実とすれば、この金が説明できない性格のものであったのか、知事に何かを依頼をするためのものであったのかなど、疑わしい点がある。今後も何かと便宜を受けるlことを期待したのではないか疑われても仕方がない。

猪瀬知事は5000万円を要請したことは100%ないと主張した。相手側から資金について申し出を受けたので断るのも失礼だろうから、とりあえず預かって、必要ないということでお返しするつもりだったと話している。徳洲会は頼まれもしないのに5000万円もの大金を渡したりするのだろうか。

金を渡した側は医療法人で、東京都に便宜を受けたい立場にある。受け取った側は、許認可権を与えたり、補助金を支給する東京都の知事。医療法人は何かを期待していたのではない。

知事の説明はたびたび内容が変わるし、曖昧な点が多い。なぜ選挙直前に個人的な借金をしたのか。5000万円の使いみちは何だったのか。しかも頼まれもしないのに相手側から申し出をしたというのは理解できない。なぜ選挙の直前に大金を受け取って隠していたのかもおかしなことだ。

この金は無利子、無担保で返済期限がはっきりしていない。常識ある知事なら、選挙前に医療法人から、いくら申し出があったとしても、こんな金を受け取るわけがない。しかも知事本人が、人目を避けるために議員会館へのこのこと出かけていって、初対面同然の議員から現金を受け取ったのだ。大胆なのか、無知なのか。

都知事選挙の直前に金を受けとったのなら、選挙資金と思うだろう。ところが猪瀬知事は、はじめは選挙資金といったのに、すぐに個人的な借り入れだったとしている。しかも記者の質問にはっきりと答えず、はぐらかしたりしたため、何かウラがあるとみたメディアは追求を強めた。

騒動のきっかけは、昨年10月25日、石原前都知事の辞任表明。その場で猪瀬副知事を後継者として指名した。これで勝負あった。12月16日に行われた選挙で猪瀬副知事は大量の票を得て当選した。

問題は選挙直前の副知事の行動だ。11月6日、副知事は仲介にたった新右翼団体「一水会」の木村代表と病気療養中の医療法人徳洲会の徳田寅雄前理事長を訪ねて選挙の支援を要請をしている。

その後11月14日知事は前理事長の次男の徳田毅衆議院議員と会食をしている。その後11月20日に議員会館で徳田議員から現金で5000万円を受け取っている。

徳洲会側から猪瀬知事に5000万円が渡っていることは、9月に徳田議員が公職選挙違反の疑いで強制捜査を受けた際にわかった。そこであわてた猪瀬知事は、すぐに秘書を通して徳田虎雄の妻に全額返した。そこで初めてこのことを明らかにした。

1973年、徳田虎雄医師は大阪府松原市に病院を開業したが、その後1975年に医療法人徳洲会を設立した。徳洲会は66の病院を含む280以上の医療施設を経営する日本最大の医療グループ。関西や九州をはじめ西日本を中心としていたが、2005年9月に東京都で初めての病院を昭島市で開業した。また昨年5月に老人保健施設を開設したが、都から工事全額の7億5000万円の補助を受けている。

徳田前理事長と石原前都知事はお互いが衆議院議員だったころに親交を深めた。2003年の衆議院選挙では、当時都知事でありながら鹿児島まで徳田候補の応援に駆けつけている。

昨年の都知事選挙では石原前都知事が猪瀬副知事を後継者に指名し、石原前知事を支援していた政治団体の多くが猪瀬副知事の支援に回った。このような経緯をみると、都知事選挙の前に猪瀬知事が徳洲会の前理事長を訪ねたのは自然の成り行きだったのだろう。

どうやら都知事は、5000万円の金を受け取ったことが、これほどの騒ぎになるとは思っていなかったのではないか。もしそうなら社会常識に欠けているとしか思えない。選挙の直前に、初対面同然の相手から、5000万円もの大金を、無利子、無担保で受け取るなど信じられない行動だ。

この金が選挙資金だったのか、政治団体の活動のための寄付だったのか、あるいは個人の借入金だったかによった対応が変わる。選挙資金であれば選挙運動費用収支報告書に記載し、政治団体への寄付行為であれば政治資金収支報告書に記載しなければならない。使わなくても記載の義務がある。違反した場合は罰則を受ける。

知事が主張しているように個人の借金であれば、都の資産公開条例にもとづいて資産報告書に記載して公開しなければならない。これに違反しても罰則規定はない。

5月に公開した資産報告書には5000万円は記載されていなかった。この件について知事は「よく認識していなかった」と弁明をし、11月22日に訂正をした。

その後、11月26日の会見で「借用書」を公表した。「選挙をやったことがないので、今後の自分の生活に不安があった」と話して、個人的な借り入れだとの主張の裏づけにしようとした。また選挙には金がかるかもしれない、使った場合には収支報告書に書くつもりだったとも話している。

あいまいな説明をしていた借用書を公開して、批判をかわそうとしたが、あまりにもお粗末な借用書でかえって疑惑を増してしまった。金の受け渡しがあったとき渡したのは国会議員、受け取ったのは副知事という2人とも公職の身だけに、粗末な借用書でやり取りしたのは不自然な感じがする。しかも借用書の件で徳田議員へ電話をしたことがわかった。いかにもすりあわせをしたように思わせる行動だ。金を受け取った際に作った借用書は、徳洲会から猪瀬知事に郵送されたという。常識的には現金で返済すれば、引き換えに借用書は渡されるもの。

1973年、徳田虎雄医師が大阪府松原市に病院を開業し、その後1975年に医療法人徳洲会を設立した。徳洲会は66の病院を含む280以上の医療施設を経営する日本最大の医療グループ。関西や九州をはじめ西日本を中心としていたが、2005年9月に東京都で初めての病院を昭島市で開業した。また昨年5月に老人保健施設を開設したが、都から工事全額の7億5000万円の補助を受けている。

徳田前理事長と石原前都知事はお互いが衆議院議員だったころ親交を深めた。2003年の衆議院選挙では、当時都知事でありながら鹿児島まで応援に駆けつけている。

昨年の都知事選挙では石原前都知事が猪瀬副知事を後継者に指名し、石原前知事を支援していた政治団体の多くが猪瀬副知事の支援に回った。このような経緯をみると、都知事選挙の前に猪瀬知事が徳洲会の前理事長を訪ねたのは自然の成り行きだったのだろう。

どうやら都知事は5000万円の金を受け取ったことが、これほどの騒ぎになるとは思っていなかったのではないか。もしそうなら社会常識に欠けているとしか思えない。あるいは誰にもわからないと思っていたのかもしれない。

今回の件は疑わしいことばからり。しかし、物的証拠が少ないため違法性を立証することは難しいのではないか。ただ徳洲会の家宅捜査で立証できる証拠が見つかるかもしれない。後は都議会でどの程度事実が明らかにできるかだ。あるいは100条委員会を開くことを議決されれば真実を明らかにすることができる。知事が潔白を主張するなら、自ら100条委員会の開催を議会に求めるべきだ。