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政府は、国の安全を高める目的で安全保障関連法案を国会に提出した。国の安全とは、他国が、日本を武力で攻撃することを、事前に防ぐこと。そのため日本はアメリカとの連携を強めて他国が日本を攻撃することをあきらめさせようとするもの。
 
日本の安全保障環境の変化を考えると、ここまではその通りだと思う。ところが法案の審議に入ると政府の説明は勉強不足のためにわかりにくい。一方野党は、国の安全保障を真剣に考えているのかといいたくなるほどお粗末な対応をしている。安全そっちのけで、いかにして政権にダメージを与えるかに力を入れている。
 
野党は、「戦争法案」だとか、「徴兵制を復活させる」といって、国民の不安をあおりたてている。830日に国会周辺で安全保障関連法案に反対する集会が開かれた。集まったのは主催者が12万人、警視庁は3万人と発表しているが、毎度のことだが開きが大きすぎる。
 
それにしてもメディアは、なぜこの集会を大きく取りあげたのだろうか。まるで日本中がこの法案に反対しているかのような扱いだ。多くの新聞は1面に、中には2面、3面と社会面まで使って大きく取りあげたものもあった。集会に参加した有名人が、「フランス革命」にも匹敵することが起こっていると訴えたと書いていたが、あまりにも陳腐で認識不足だ。
 
民主党の岡田代表は集会で、「憲法違反の法案」は通すわけにはいかないと呼びかけた。集会に参加するのは自由だが、国会議員なら国会で、もっと真剣に審議を尽くすべきだ。
 
野党第1党の民主党は、現在の安全保障環境をどのように考えているのだろうか。安保法案を廃止にするといって衆議院の特別委員会で、強硬採決反対などと書いたプラカードをTVカメラに掲げていたが、これでは国民から支持が得られるわけがない。
 
NHK8月に調べた政党支持率をみると、各党の支持率に大きな変化はない。自民党が34.3%に対して、民主党は10.9%と支持が増える兆しはない。野党全部を足しても18.6%にすぎない。特徴的なのは、常に「支持政党なし」が自民党と拮抗し、8月は34.5%となっている。
 
ただ内閣支持率は7月、8月と2か月続けて「支持する」が「支持しない」を下回った。これは201212月に阿部内閣が発足してから初めてのこと。しかし9月に新聞各社が行った調査では、再び「支持する」が「支持しない」を上回った。  
 
安全保障関連法案には3つの狙いがある。1つは集団的自衛権の行使を可能にすること、2つ目はアメリカの政策転換によるもの、3つ目は、中国の武力強化をけん制するため。
 
これまで歴代の政権は、集団的自衛権の行使を憲法違反としてきた。しかし、安倍内閣は制限付きで行使を容認した。もともと自民党の結党目的は憲法改正。戦後、アメリカによって作られた憲法を日本独自で作り直そうという強い意志がある。
 
日本は集団的自衛権を持ちながら行使できないのは憲法上の制約があるため。行使するには憲法を改正しなくてはならない。しかし憲法改正には衆参両院で3分の2の賛成を得て国民投票で過半数を得なくてはならない。現状与党は参議院で3分の2に達していない。それに国民投票で過半数を得られるか明確な見通しはない。したがっていつ改正ができるかはっきりしない。
 
安倍首相は、いつまでも日本がアメリカに守られているよう状況をから抜け出し、自立した立場に立ちたいという思いが強いのではないか。実質自衛隊は軍隊でありながら軍隊とは呼べないし、アメリカ軍が攻撃を受けていても援護できない。このままではアメリカから信頼を得られないし、関係を弱めてしまうことになりかねない。かといって憲法改正には時間がかかる。そこで憲法の解釈を変えて集団的自衛権の行使を可能にしたということだろう。
 
昨年の71日、政府は臨時閣議を開いて、集団的自衛権の行使容認を決定した。これを受けて今年4月に「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)18年ぶりに改定した。ガイドラインは、日米安全保障条約に基づいてつくられ、日米間の防衛協力の基本的な枠組みや方向性を示している。
 
これまでのガイドラインは、朝鮮半島の有事を念頭に日本周辺で武力衝突が起きた場合の自衛隊と米軍の役割分担を決めたもの。今回改定したガイドラインは、集団的自衛権の行使を前提に、日本を守るための協力体制の見直しと、自衛隊が米軍の支援を世界規模に拡大する内容。
 
改定の基本は、日米安保条約の片務的解消にある。片務的とは一方だけが義務を負うこと。すなわちアメリカは日本を守る義務があるが、日本はアメリカを守らなくてもよいというもの。これは憲法上の制約によるためだが、アメリカがつくった憲法だからアメリカは文句の言いようがない。
 
集団的自衛権が一定の制限を設けて同盟国への行使を認めるとはどのようなことなのか。これまで日本近海で日本の防衛にあたっているアメリカの艦船が攻撃を受けたとしても、自衛隊が出動して援護することはできなかった。これを援護できるようにするという、当たり前といえば当たり前のこと。
 
国会の参考人になった元内閣法制局長官が、集団的自衛権の本質は他国防衛だと述べたが、ではなぜ自衛権と呼ぶのか。自衛のための他国防衛だからではないのか。
 
集団的自衛権の行使をめぐって合憲、違憲問題が盛んになり、戦争に引き込まれる恐れがあるとか、自衛隊員の危険が増えるなど野党が指摘した。戦争を避けるための法案が、いつのまにか戦争法案と呼ばれるようになってしまった。
 
次の目的はアメリカの国内事情にある。20154月、オバマ大統領は「われわれは世界の警察官であるべきではない」と語った。アメリカの国家財政は赤字が増大する一方で、国債などの債務が占める割合が75%にもなろうとしている。かつて米軍は、イラクやアフガニスタンで、大規模な国家予算を潤沢に使ったが、もうその時代は終わった。経済的な理由だけではない。アメリカ人の半数が、よその国のことに口出しすべきではないと考え始めるようになった。
 
そうはいってもアメリカは、自らがつくりあげてきた国際秩序を維持する必要がある。そのためには同盟国との協力関係の強化が必要である。そこでアジアの同盟国に対して、自分の国を防衛するための能力を高める努力をすることを促した。またアジア地域の国は、各国が協力してアジア太平洋地域の安定化を図るための努力をすることを強く求めるようになった。
 
米国の力をあてにして、自国の安全保障を確保するような状況はもはや認められなくなってきたのだ。他国からは、日本は憲法を盾に、あれもできないこれもできないといっているようにみられる恐れがある。現に破天荒な発言で話題を集めているアメリカの大統領候補の一人は、日米安保の不公平さを痛烈に批判している。
 
次に中国の台頭。中国はGDP世界2位という経済力を背景に軍事力の強化を推し進めている。世界に向けて軍事力を誇示するために、93日に行う抗日戦争勝利70周年記念式典を行った。特定の国を対象にしていないといいながら、「抗日」を掲げているのは明らかに矛盾している。
 
式典には各国の首脳や高官が出席したようだがプーチン大統領と韓国大統領が出席した。アメリカ、ドイツ、EUは、政府代表を派遣したが、日本は、政府関係者は一切出席しなかった。
 
中国の軍事力強化は国防費に表れている。2015年の中国の国防予算は、前年比で10.1%増の169千億円。国防費は5年連続して10%増えている。国際社会からは膨張する国防費の透明性を求める声が上がっている。
 
2014年の軍事費は、1位がアメリカの6,100億ドル、2位が中国の2,160億ドル、3位がロシアの845億ドル、日本は9位で458億ドルとなっている。このように中国はまだアメリカとの差があるとはいえ、軍事力を急速に強めている。
 
兵力は中国が230万人、アメリカが157万人、北朝鮮が119万人、ロシアが96万人、韓国が66万人程度とみられる。日本の自衛隊員は24万人。なお今回中国は兵力を2017年末までに30万人削減すると発表したが、この程度では実質的な軍事力の削減には結びつかい。
 
中国は尖閣諸島と東シナ海ガス田開発の問題を抱えている。中国は、日本の固有の領土である尖閣諸島の領海を頻繁に侵犯し挑発し続けている。さらに東シナ海では日本との共同開発を合意しておきながら、これを無視してガス田の開発を勝手に進めている。これは資源強奪の疑惑がある上に、軍事基地として利用する恐れがある。もしそうなれば安全保障上かなりな脅威になる。
 
また石油や天然ガスなど豊富な天然資源が埋蔵されている可能性のある南シナ海では、中国は大規模な埋め立てを進め、滑走路や港湾などの施設建設を進めている。この地域は海上交通の要所であるだけでなく、埋め立て地は軍事目的にも利用される恐れがある。
 
この地域は台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張しているが、中国は管轄権を主張して実効支配している。
 
このように中国は国際法を無視した強引な方法で領土拡大を進めている。またロシアは軍事力によってクリミアを併合するなど似たような行動をとっている。両国は国連安全保障理事会の常任理事国であり拒否権をもつ。そのため、いかに他国が両国を非難し、訴えても安保決議は決して通らない。これまでにもこのようなことは何度もあり、国連は有効に機能していない。
 
ロシアは、第二次大戦後、北方領土を実効支配している。8月22日、ロシアのメドベージェフ首相が択捉島を訪れた。ロシアがこの地域の開発を重要視していることを示すため。メドベージェフは過去2度国後島を訪れている。これは領土問題で日本と妥協しない強硬な姿勢を示すため。しかし、プーチン大統領は一度も北方領土を訪ねていない。このことは、ロシア国内には強硬な世論があること示しながら、一方では日本との領土交渉を有利に進めたいという思惑があるものと思われる。
 
さらに北朝鮮は核開発を進め、頻繁にミサイル発射実験を行っている。6月にはミサイルを日本海に向けて発射している。19988月には北朝鮮が発射したテポドン1号は日本列島を越えるコースを飛行し太平洋に落下している。
 
昨年度の航空自衛隊の緊急発進は、943回で、そのほとんどが中国機とロシア機でほぼ半々の割合になっている。
 
これらをみたとき日本の安全保障をどのように考えたらいいのだろうか。いつどのような危険な状態になるのか想定することはできないが、ここで取り上げた国は、さまざまな準備を着々と進めていることは間違いないし、常に挑発的だ。民主党はこのような現状をどのように感じているのだろうか。またアメリカとの関係をどのようにしようとしているのだろうか。
 
国の最大の責任は国民の生命と自由と財産を守ること。そのために政治は先を見据えて必要な施策を整えることは当然のことといえる。安全保障関連法案はその一環といえる。
 
政府はアメリカとの連携を強化することによって抑止力を高めるという現実的な方向へ向かっている。集団的自衛権の行使に関しては、自衛措置に限るという厳しい条件を設けている。これらが戦争を起こさないための手段と考えることは同意できる。
 
野党は戦争をするための法案だと繰り返して不安をあおっている。戦争には巨額な財源が必要だ。1千兆円もの借金のある国家財政、どのようにして金をあつめることができるのか。アメリカも中国も戦争は避けたいのだ。人命はもちろん財政負担が大きすぎる。世界経済は不安定で高度成長は望めない。
 
第二次世界大戦で政府は、現在の金額で数千兆円の国債を発行したが、結局価値のないものにしてしまった。
 
ならば野党、特に野党第1党の民主党は、現在の安全保障環境やアメリカとの関係をどのように考えているのだろうか。安保法案を廃止にするといって衆議院の特別委員会で、強硬採決反対などと書いたプラカードをTVカメラに掲げていたが、こんなことしかできないのかという思いが強まった。
 
安全保障関連法案がどのような形で成立するかに関心が集まっている。一つは60日ルールを適用するものだが、採決に向けての動きもある。どちらにしても法案は今国会の会期内には成立する。
 
ここで、これまで進められてきた国会での審議の経緯を振り返ってみる。去年7月に閣議で集団的自衛権の行使を容認し、これを受けて今年の4月27日にガイドラインを改定した。さらにガイドラインを実践できるようにするための安全保障関連法案が国会で審議されてきた。
 
5月26日から衆議院で法案の審議が始まったが、さっそくつまずいた。64日、衆議院の憲法審査会に3人の憲法学者を参考人として呼んだが、自民党推薦の参考人が集団的自衛権の行使は憲法違反だと表明したからこれに野党が飛びついた。法案の本質はほっておいて、延々と違憲発言が続き、無駄な時間を使ったようだ。
 
野党は、憲法学者が違憲と言っているから憲法違反だと主張し続けている。しかし、学者は憲法の条文を解釈するだけであって、中国や北朝鮮の行動などと結び付けて判断しているわけではない。学者は自由な立場で発言するが、政策に責任をもつ立場にはない。政策の結果に責任を負うのは政治家。今でも自衛隊は違憲だとする憲法学者は多いそうだ。なぜなら憲法の条文には自衛隊の存在が明記されていないからだ。
 
それにしてもなぜ自民党が推薦した参考人が違憲発言をしたのだろうか。この参考人は早稲田大学の教授だが、これまでたびたび国会の委員会に参考人として呼びだされてきた。
 
しかし自分が、何党から推薦を受けたかはっきり知らないことがほとんどだったそうだ。「特定秘密保護法」の審議のときも自民党推薦の参考人としても呼ばれたが、当日その場で自民党の推薦人だと知らされたという。「裁判員裁判制度」導入の時は、何党の推薦なのかいまだにわからずじまいのままだそうだ。党から推薦を受けてもこのように答えて欲しいと頼まれることはまったくないそうだ。なんともおかしなことがあるものだ。いい加減なのか、公平さを求めたためなのかはわからない。
 
716日、衆議院での安保法案の審議が116時間に達し、十分に審議したとみなしたのか採決に入り、賛成多数で可決した。その後727日に法案審議は参議院移った。
 
ところで集団的自衛権の行使には制限がもうけられている。それが以下の新3要件だ。
 
 わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。
 
 これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき。
 
 必要最小限の実力を行使する。
 
それにしてもこれを読んだだけでは制限の内容はわからないし、政府の説明を聞いていてもわからない。なぜこの法案が必要なのか、法案の全体像はどのようになっているのか、なぜ10の法律を1つにまとめる必要があるのか、法律を改定したポイントはどこか、後方支援の内容や、人道支援の必要性と内容など疑問は多い。
 
特に国民が気にしているのは、自衛隊は戦争に巻き込まれる恐れはないのかという点。もっともアメリカにも日本を守っているうちに戦争に巻き込まれる恐れがある。それに自衛隊員は危険にさらされることがあるのか、さまざまな危険に直面した時の歯止めはあるのか、自衛隊は世界中どこにでも行くことになるのかなどについての指摘がある。
 
1991年の湾岸戦争で、日本はアメリカなどに約130億ドルの財政支援をしたにもかかわらず、自衛隊を派遣しなかったことが評価されなかった。その後、日本はアメリカなどの求めに応じて、1992年から国連の平和維持活動(PKO)に、2003年からは イラクへの人道支援に自衛隊を派遣した。自衛隊の海外派遣に反対する国民は多かったが、海外派遣が恒常化し、定着するようになり、国際的な評価が高まるにつれて国内でも評価が高くなった。
 
19926月にPKOへの自衛隊の組織的な参加を可能にしたPKO協力法案が衆議院本会議で成立した。23年前の参議院では34日に及ぶ牛歩戦術が行われた。当時審議に十分に時間をかけたが、結局野党からの理解は得られないまま成立させた。今回もこの状況に似ている。
 
今回、参議院に移ってからの審議が深まったとはとても思えない。維新の党が対案を提出したのを受けて与党は調整に入ろうとしたところ、突然維新の党に分裂の動きがでたため見通しが立たなくなってしまった。
 
結局与野党とも丁寧な説明をするといいながら、あいまいのまま終わろうとしている。審議に時間をかければいいというものではない。重要なのは説明力なのだ。安全保障の具体的な状況や対応について政府の詳細な説明には限度があるのかもしれない。
 
具体的に危険な状態を想定すると、特定な国を刺激することになりかねない。またできることやできないことが全部わかってしまう恐れがある。それでは相手の思うつぼになってしまうことになってしまう。
 
そうなるとあいまいな部分を残して政府の裁量権が重きを置くことにならざるを得ない。当然政府の判断で物事が動くことはある。政府が正しい判断ができれば決して悪いことではない。しかし、政府・与党は国民から任せたといわれるほど信頼を得られるかどうかだ。いづれにしても政府の説明が力不足なことは否めない。
 
それにしても民主党には、政策論で与党と対等に渡り合おうとする姿勢が見られない。何にでも反対するだけの政党かとみられてしまう。すでにその傾向は強い。それは党内事情があるからだろうか。
 
民主党には、かつて自民党から旧社会党に所属していた議員がいる。そのため政策を一つにまとめるのが難しいのではないか。政権を担っていた当時からそのことが見えていた。
 
それにしても525日から安全保障関連法案が衆議院で審議入りしているにもかかわらず、国会での議論が深まったとはいえない。特に政権を担ったことのある民主党は、日本の安全について政府与党と正面から論じあう契機であったはずだ。
 
ところが政府が日米同盟によって抑止力を高めるとする安全保障関連法案を、民主党は「憲法違反」、「戦争法案」などと決めつけて頭から否定して廃案にすると主張している。ならば民主党は国会で日本の安全保障をどのように考え、日米関係をどのようにしようとするのか表明すべきだった。いまさら言っても仕方がないことだが。

 
2009年7月に行われた衆議院選挙では民主党は、公示前の193議席から絶対多数の308議席と大幅に議席を増やし政権交代を実現した。戦後最も多い議席数を得て鳩山政権を樹立した。しかし、その後の民主党は政権運営の拙さや党内対立によって一気に支持を失った。

その結果、2012年12月に行われた衆議院選挙で民主党は230議席から57議席とわずか4分の1にまで議席数を減らしてしまった。一方自民党は118議席から過半数の241議席を大きく上回って294議席を獲得した。

民主党が政権の座から滑り落ちてから野党の影は薄く、自民党だけが注目を集めている。NHKが4月に行った政党支持率は、自民党が38.1%、民主党が7.4%、共産が3.6%、公明党が3.4%などと自民党以外はわずかな支持率になっている。
野党7党をあわせてもわずか14.1%にすぎない。支持政党がないとする、無党派層は37.2%となっている。

野党各党の復活の動きは見られず、党の再編ばかりに熱がはいっている。みんなの党から離脱して結党した結いの党は、日本維新の会との合流を目指している。その日本維新の会は、自民党との連携の動きを見せ、みんなの党の渡辺前代表は自民党に接近していたが代表が辞任した後の動きはわからない。

それにしても野党のいくつかの政党が自民党に近づこうするのは、党の政策が自民党と近いためか。あるいは党勢を復活するスベがなく生き残りをかけているのか。

みんなの党は渡辺喜美代表が辞任し,浅尾慶一郎幹事長が就任した。みんなの党は2009年8月渡辺、江田憲司に浅尾など3人が加わって5人で結成された。脱官僚、地域主義、生活重視などが主要テーマ。自民党、民主党から距離をおく第三局として注目を集め、2012年の衆議院選では8人から18人に、2013年の参議院選では13人から18人と増え、国会議員は36名になった。

しかし、安倍内閣への接近を強める渡辺代表と、野党再編によって自民党との対決路線を主張する江田幹事長との間で対立が生じた。昨年7月に行われた参議院選挙開票日に江田幹事長が、独断で日本維新の会の松野頼久幹事長と会談を行ったことで渡辺代表との関係はさらに悪化。8月に開かれた両院議員総会で渡辺代表は江田幹事長を解任し、後任に浅尾が就任した。  22名現在

昨年12月、江田はみんなの党を離党した14人に1人が加わって結いの党を結成し、代表に就任した。現在日本維新の会と合流を目指して政策協議をしている。しかし憲法改正を強く訴える石原慎太郎共同代表は護憲政党とみなしているゆいの党とは手を組めないと強硬姿勢をつらぬく。また江田が目指す野党再編による新党結成には懐疑的。石原は自民党との合流を考えているのではないか。

みんなの党は、分裂後も経済、安全保障政策などで安倍政権に協力する姿勢を鮮明にしていた。ところが今年の3月渡辺代表が大手化粧品会社の会長から2010年7月の参議院選挙直線に3億円、2012年12月の衆議院選挙直前に5億円を借り入れていたことを週刊誌が明らかにした。当初渡辺代表は、私的な借り入れだから何も問題はないと主張していた。

しかし8億円という多額な借り入れと、それらが2度とも選挙の前に借りていることから、政治資金規正法や公職選挙法に抵触する恐れがあるとの疑いをもたれた。昨年12月に医療法人から5000万円を受け取っていたことがわかって辞任した猪瀬都知事の例と非常によく似ていることもあって疑惑は深まった。

渡辺代表の説明があいまいなこともあって、騒ぎは大きくなった。しかも党内や地方議員からも辞任を求める声が相次ぎ、メディアも批判的な態度を見せ始めた。追い詰められた渡辺代表は、4月7日、記者会見を開いて、借り入れは党の選挙費用にあてたもので法的には問題ないと釈明した上で、騒ぎの責任をとって代表を辞任することを表明した。党は議席をを増やしてきたが、ここにきて大きく後退してしまった。

当初渡辺は、日本維新の会との連携を望んでいた。両党の政策がまったく一致してるとして積極的に合流を働きかけた。2011年4月の大阪での府知事と市長のダブル選挙では渡辺は応援に駆けつけている。

両党は何度も政策協議を重ねたが、なかかな思い通りに進まなかった。両党は主導権を握るために、日本維新の会はみんなの党に解党を求め、みんなの党は、旧太陽の党を切り離すことを要求するなどけん制し合い、次第にかみ合わなくなってきた。

2013年7月の参議院選を前にして日本維新の会の橋下代表が、いわゆる従軍慰安婦や沖縄での風俗利用などの一連の発言で批判を受けるようになり、一気に支持を減らしてしまった。

日本維新の会とみんなの党は参議院選挙で25の選挙区で候補者を一本化し、共通の公約を作ることで合意をしていたが、橋下代表が発言を撤回しないため渡辺代表は白紙に戻すことを表明した。

7月の参議院選挙で日本維新の会は3から9に増えた。しかし2012年12月の衆議院選挙では11から54と大幅に増えたこともあって参議院選でも急増するのではないかと思われていた。しかし6議席増にとどまった。一方みんなの党は、衆議院選では8から18へ、参議院選では13から18と着実に増やしてきた。

みんなの党は議席を増やしてきたにもかかわらず、党は内部対立で分裂し、さらに今回は党の柱ととなっていた渡辺代表が金銭問題で辞任するという、自滅の道を歩いてしまった。結局36人の国会議員は分裂後、22人に減った。

日本維新の会は、2012年9月28日、自民党、民主党、みんなの党から離党した国会議員を加えて、、国会議員13名で結党した。地方改革は地方の力だけでは実現できないという理由から国政に進出した。11月17日には、石原慎太郎が代表の太陽の党と合流した。

2012年12月16日に行われた衆議院選挙では54議席獲得し、野党第2党に躍進した。橋下代表は、大阪府知事と大阪市長で実践した改革や、ていねいな語り口で大阪住民から絶大な人気を得ていた。この選挙で躍進した日本維新の会に各党の党首が会談を申し込む姿がテレビで写す出されたが、いかにも便乗しようする思惑が見えてとれた。

党内では主要政策に違いのある旧太陽の党の議員と、結党以来の議員との間で対立が生じてきた。そんなとき2013年5月に橋下代表が従軍慰安婦や沖縄米軍への風俗利用発言などで批判のを浴びるようになった。

2013年7月21日の参議院選挙では8名が当選し、非改選の1名をあわせて9議席に終わった。改選前の3議席を上回ったが法案提出権の10議席に届かなかった。2012年12月の衆議院選挙と同じように大躍進を期して44名を擁立したが結果は期待を大きく裏切るものだった。橋下代表の発言や党内対立などが影響したのだろう。

民主党は2012年12月の衆議院選挙で大敗したあと、2013年7月の参議院選挙でも86議席から69議席と27議席減少した。自民党は84議席から115議席と31議席増やしている。

2009年7月に民主党政権になってからの混乱はひどいものだった。70%を超す高い支持率を得てスタートした鳩山政権は、沖縄の普天間米軍基地の言外移設発言で移設先をみつけることができず断念。これまで進めてきた辺野古沿岸部案も受け入れ撤回する事態になってしまった。

また小沢幹事長に対する政治資金収支報告書への虚偽記載問題が再燃した。また鳩山首相より小沢幹事長に実質的な権限が集まる二重構造や強引な政治手法に批判が出て、内閣支持率は下降し始めた。鳩山は2010年6月に辞任した。

後継の代表選挙は、反小沢体制を掲げて菅直人が立候補したが、党内最大勢力を持つ小沢グループは中立派として立候補した樽床信二を支援した。菅が圧勝し、主要ポストに反小沢の急先鋒の枝野幹事長、仙谷内閣官房長官などを登用した。その後も小沢をめぐって党内抗争が続き、亀裂は深刻になった。

2010年9月尖閣諸島で中国漁が、違法操業として取締りをしていた海上保安庁の監視船に衝突してきた事件がおきた。この対応をめぐって参議院で官房長かと国土交通大臣に対する問責決議案が可決し政局は混乱した。

2011年3月に東日本大震災が発生した。6月に災害復旧と原発事故の処理に対応できないとして自民党などが内閣不信任案の提出の構えをみせた。これに対して小沢に近いグループが同調する意向を示した。しかし、菅が辞意ともとれる発言をしたため不信任案は否決された。ところが菅は居座りを決めた。そのため仙谷など党執行部からも退陣要求が出たが8月に退陣した。

その後野田政権が発足した。しかし閣内では鉢呂経済産業相が失言をしてわずか10日で辞任。山岡国家公安委員長のマルチ商法関与疑惑、川俣防衛相の失言やブータン国王来日歓迎晩餐会の私用優先欠席など閣僚の資質に対する問題が続出。

その後も党が進める消費税増税に反対する議員などの離党者が続き2011年だけ14人の議員が民主党を離れた。翌年も田中防衛相の失言、前田国交相の公職選挙への抵触で参議院で問責決議案が可決した。

消費税増税に反対する小沢は衆議院議員40名、参議院議員12名のが離党届を提出したが結局50名が離党した。その後も離党者が続き、9月に日本維新の会維新の会が結成されると3人が離党し合流した。

その後野田は代表選で再選された。3回目の内閣改造を行ったが田中法相の外国人からの献金を受けていたことや暴力団関係者との交際が発覚し辞任に追い込まれた。この件に関して自民党などは首相の任命責任を追求する構えを見せた。国会審議で重要法案の採決で野党から協力を得られない可能性が高まった。

11月になると、新聞各社などの世論調査で内閣支持率が軒並み急落し、野田は党内での求心力を失うなどの動きから日本維新の会などのいわゆる第三局の選挙準備が整う前に解散し、総選挙をしたほうが得策と考え意思を固めた。

2009年9月の民主党政権誕生以後、離党や除籍された衆参両院議員は103名になった。そして民主党は3年3ヶ月で野党に転落した。有権者が民主党を見る目は厳しかった。

2012年12月の衆議院選挙で野田内閣の現職閣僚が軒並み落選した。藤村官房長官、城島財務相、樽床総務相、田中真紀子文科相、三井厚労相など7人になる。閣僚経験者では仙谷など主要議員が落選した。また菅元首相、横道前衆議院議長 海江田元経産相などは小選挙区で落選したが比例重複で復活当選した。

今後の野党の復活はあるのだろうか。これまで見たようにみんなの党は分裂をした後渡辺代表が辞任したばかり。日本維新の会は党内対立が続いているうえに、橋下代表の不用意な発言などで支持を落とした。民主党は野党第1党にもかかわらず党内は不安定な状況で先行きは不透明。

当分選挙がないため党勢は変わらない。相変わらず自民党の支持は高く野党は対立軸を見つけられない。そんなときに自ら支持を失うような行動をとってしまっている。そのため野党は合流によって拡大を目指そうとっしているのかどうか。

日本維新の会はみんなの党から離れて結成した結いの党との合流を目指して政策協議を行っている。しかし、石原代表はこの合流に反対している。むしろ自民党との連携を目指しているように見受けられる。

昨年の8月、日本維新の会が自民党と国会改革などで政策協議を行うとの情報が伝わった。国会改革は総理や閣僚が国会への出席回数が多いため外交に支障がでるのでこれを改めたいというもの。

両党には憲法改正についても連携をとりたいという思いがある。しかし公明党は憲法改正については慎重な態度をみせているため、両党の連携には警戒感があるはず。

日本維新の会はみんなの党との連携を図っていたが流れてしまったので、存在感を示すために自民党に接近することが得策を考えてもおかしくない。それに2012年に橋下代表は安倍さんを維新に迎えようとしたくらいだから考えは近いはず。

しかし、日本維新の会は大阪の地域政党からスタートし、既成政党を批判して期待を集めてきたこともあって支持者から同意が得られるかは疑問。

野党各党がそれぞれ問題を抱えて支持を増やせないでいるのに自民党は着実に実績をあげている。ただし自民党には、集団的自衛権や原発問題、消費税の10%への引き上げなど難しい課題を抱えている。野党には、党内をまとめたうえでこれらの課題に鋭く切り込んで正しい方向へ導くことを期待したい。

やっと停まっていた原発の一つが動き始めるようだ。2011年3月の東日本大震災以後国内の原発は定期検査がきた順に停まっていった。国内には54基の原発があったが、福島原発の6基の廃止が決まったので現在は48基が停止中。

2012年5月に北海道の泊原発3号機が定期検査のため運転を停止し国内のすべての原発が停止した。しかしこの年7月に多くの問題を抱えたまま福井県の大飯原発が再稼動した。そして2013年9月に定期検査のため停止し、再びすべての原発が停止している。

原発に替わって火力発電所が電力を供給しているため停電は避けられているが、燃料費が増えて電気料金が値上がりし、家庭や経済活動に影響を与えている。

先月、北海道電力は再稼動の見通しが立たないとして家庭向け電気料金を再度引き上げる意向を示した。すでに家庭向けで7.73%、企業向けで11%引き上げている。原発が動かないと、1基の発電コストは1日で2億円~3億円増えるというから関係者はあせる。

再稼動の審査が始まったのが2013年の7月。8つの電力会社が10原発17基の審査を申請している。当初規制委員は順調なら審査は半年程度で終わり、早ければ昨年の末にも再稼動が決まるとみられていた。ところがいつまでたっても終わる見通しがたたないため政府内から批判の声が出始めた。しかしここにきて再稼動に向けて動き出した。

再稼動審査で難しいのは地震への対応。地震が起きる可能性と震度の予測だ。それによって対策の費用も時間も大きく変わる。しかも対策を講じても絶対安全と言い切れないところに難しさがある。

そんな折、鹿児島県の九州電力川内原子力発電所の再稼動に向けた安全審査が進められることがわかった。早ければ5月には審査結果が出て夏には稼動できる見通し。川内原発が優先的に審査を受けることになったのは、地震や津波の危険度を最大限に見積もって対策を講じたことによる。

今後再稼動を認められる原発は増えるものと思われる。特に地震対策を進めてきた愛媛県の四国電力伊方原発や佐賀県の九州電力玄海原発の審査が進むものとみられている。

3月16日、鹿児島市で脱原発を訴える市民集会が開かれた。主催者は参加者を6千人と発表した。しかしこのニュースは東京には伝わってこなかった。3月18日にある新聞社が原発再稼動についての全国世論調査を行った。再稼動賛成が28%、反対が59%という結果になった。各紙の調査でも同じような結果となっている。

ところで政府は原発事故後間もなく停止中の原発を再稼動させようと動き始めた。しかし、大事故の後にもかかわらず規制基準を見直すこともなく進められた。福島事故のあったわずか3週間後の3月末に、国の原子力・保安院は緊急安全対策を各電力会社に指示をした。経済産業省は、この対策がとられたことが確認できれば再稼動をさせるという考えだった。

6月に、当時の海江田経済産業大臣は原発の安全宣言をし、定期検査の作業を終えていた佐賀県の玄海原発を再稼動させようとした。しかし、まだ福島原発の実情がわからないうえに、安全基準の見直しもしないまま、また原発の推進と規制の両方が経済産業省にあるという組織上の問題も未解決のままの再稼動だった。大事故が起きて間もないというのに安全を無視した進め方に批判の声が上がった。

そこで政府は、7月、急遽ストレステストを導入することを決めた。ストレステストは地震や津波などがおきたとき、原発がどこまで耐えられるか、弱点はどこかどを評価するものだがこのテスト。どの程度安全が確認できるかは不明確だった。

これを受けて関西電力は、10月に3号機の、11月に4号機のストレステストの結果を原子力安全・保安院に提出した。翌2012年2月にこれを「妥当」とする審査書が作られ、3月に原子力安全委員会も「妥当」とし、この日開かれた委員会は5分で終わった。これを傍聴していた市民は「結論ありきの茶番だ」と批判した。

4月6日に国は「原子力発電所の再稼動にあたっての安全性に関する判断基準」(暫定基準)を示したが、3日後の4月9日に関西電力は安全対策の計画書を提出した。この日関係3閣僚協議が開かれ、事実上の安全宣言をした。3日で計画書を作成するとはあまりにもお粗末な対応といえる。政府は安全性や世論より再稼動を最優先して進めた。

その後県専門家委員会の結論が大幅にずれ込んだが、地元の同意を得て2012年7月に3号機、4号機が再稼動した。しかし2013年9月には3号機、4号機が定期検査に入ったため再びすべての原発が停止した。

原発は電気事業法によって年1回原子炉を止めて定期検査を行うことが義務付けられている。定期検査期間は約3ヶ月。定期検査後の再稼動には地元の了解は求められていないが、福島原発事故後は地元の了解を優先している。

福島原発の事故間もないのに大飯原発の再稼動を急いだのは、夏場の電力不足を避けたかったため。関西は原発依存度が高い。2010年度の関西電力の原発比率は51%と全国10電力会社で1番高く、なかでも大飯原発の発電量は、日本で2番目に多い。そのため政府は、再稼動できなかった場合の影響を恐れて再稼動を急いだ。

前年のような猛暑になるとピーク時には15%の電力が不足するとみられていた。経済活動や家庭生活への影響は避けられないという事情があった。そのためこの夏の電力不足を乗り来るため強引に再稼動をさせようとした。

2012年10月、原子力委員会は福島原発事故を教訓に規制基準の見直しを始めた。そして2013年7月に新規制基準をまとめ施行した。

福島原発事故では地震に対しては原子炉は正常に自動停止し、非常用ディーゼル発動機も正常に起動した。ところが、その後に襲ってきた津波により非常用ディーゼル発動機、配電盤、バッテリーなどの重要な設備が被害を受け、非常用を含めたすべての電源が使用できなくなり、原子炉を冷却する機能を喪失した。その結果、炉心溶解をそれに続く水素爆発による原子炉建屋の破損などにつながり、環境への重大な放射性物質の放出にいたった。

そのため新規制基準では電源喪失に備えて24時間以上もつバッテリーを置くことや、火災対策として燃えにくいケーブルを使うこと、複数の空調設備を備えた免震重要棟を備えることなどを義務付けた。

また地震や津波の想定を厳しくした。起こりうる最大の津波を計算して防潮堤などの設置を義務付けている。活断層もこれまでよりも年代を広げ、判断が難しい場合は活動の時期を40万年前までさかのぼって調べることを求めている。

福島原発事故後、経済産業省に原子力発電を推進する「資源エネルギー庁」と規制する「原子力安全・保安院」がある。しかも両方の組織間で人事異動が行はれてきた。また退職者が電力会社に天下りし、規制行政にかかわるなど組織の機能が果たされていなかった。

そのためその機能を環境省に移し、2012年9月に独立性の高い「原子力規制委員会」を置き、事務局として「原子力規制庁」を新設した。

そのほかテロ攻撃対策などかなり厳格な基準が設けられたが、それでも絶対安全とは言い切れない。そのため事故があった際の避難対策などの整備が求められる。さらに再稼動はしても常に安全性を向上させるための努力は続けて欲しいものだ。





 
国会でまったく意味のないことが行われた。そのことを政変があったかのようにテレビや新聞で伝えてくるので、いやでも耳に入ってくる。政治のレベルの低さをさらけ出した出来事だ。
 
自民党の元外務大臣の川口順子参議院環境委員長が4月23日、24日の2日間、北京で開かれた国際会議に出席した。参議院の議院運営委員会の渡航許可を得ているのでこの点は問題ない。滞在中、急に中国の要人と会談ができることになったため帰国を1日延ばした。
 
このことが今回の発端。25日は参議院環境委員会が予定されていた。川口委員長は党と相談して滞在を1日延ばすことを野党から了解を得ようとしたがなぜか野党は拒否した。しかたなく川口委員長は中国の要人との会談を優先させた。結果的には国会の許可を得ないで滞在したことになる。このことを野党は問題にした。
 
参議環境委員会は委員長が出席できなくなったため中止になった。野党は川口委員長が無責任な行動をとったとして、参議院に解任決議案を共同提出した。参議院では野党が多数を占めているため可決することになる。
 
野党はどのような目的で委員長を解任しようとしているのかが分からない。自民党にダメージを与えたいというのか、野党が共同して決議案を提出したことに意味があるのか。いかにも無駄なことをしているようにみえる。
 
川口委員長が北京滞在中に中国の外交を統括する前外相の楊潔国務委員との会談が急きょ設定された。尖閣諸島や閣僚の靖国神社参拝で中国との関係は冷え込み関係改善の糸口は見当たらないままの状態が続いている。
 
そこでこの会談が改善のきっかけになるのではないかと考えた川口委員長は、自民党の脇雅史参議院国会対策委員長らと電話で協議し会談を行うために帰国を1日延ばし25日にすることにした。
 
自民党は参議院の議院運営委員会の野党の理事に渡航延期を打診したが拒否された。川口委員長は迷った末に中国にとどまって楊国務委員と会談をした。
 
このことに野党は反発した。無断で滞在を延期したというのだ。野党はあくまで形式を重視している。当日開かれる予定だった環境委員会は5分ほどで終わるものだったそうだ。それでも民主党は怒って見せた。
 
2日、川口委員長は、記者団に「難しい判断で迷ったが、日中の直接対話がない中で日本の思っていることを伝える好機で国益上も重要だと思った」と説明している。この日川口委員長と自民党は中国出張期間を延長した経緯などについて報告書を作成し参議院の各会派に提示している。
 
野党は共同決議案の中で「委員長は職務を自ら放棄したことも同然で断じて容認できない」としている。自民党は野党に、渡航延期の了解を得ようと働きかけているが野党は認めようとしなかった。中国要人との会談よりたった5分で終わる委員会のほうが重要と主張して委員長を解任しようとしているのだ。
 
7日の午前中の参議院環境委員会理事懇談会では、野党側から川口委員長に自発的な辞任を求める意見が相次いだようだ。滞在延期の理由がはっきりしているし、その理由が中国要人との会談となると、あまり強行に攻めると国民から反発される可能性もある。そこで野党は自発的に辞めさせようとした。
 
しかし川口委員長も簡単に辞めるわけにはいかない。辞めれば自分の非を認めることになる。尖閣問題などで中国との関係がこじれているとき日本の元外相が中国の前外相と会えることになったのだから会談を優先してどこに問題があるのかという思いがある。川口委員長が辞任しないのは野党の見込み違いだろう。
 
野党は委員長が自ら職務を放棄したのも同然と言っているが、中国要人との会談を断って帰ってくるべきだったと言いたいのだろうか。
 
7日夜、安倍首相は首相官邸で川口委員長と会談し、経緯について報告を受けた。その後川口委員長は自身の進退について「党と相談して事態の推移を見ながら考えていく。苦渋の決断をいたということを理解していただけないのが残念だ」と話している。
 
川口委員長の解任決議案の提出は民主党が野党各党に呼びかけたもの。比較的自民党に協力的な新党改革もこれに同調した。民主党は今回の決議案を野党共闘のきっかけにしたいという思惑があるのだろう。
 
今国会の会期は6月26日。その後は7月の参議院選挙に向けて実質的な選挙戦に入る。民主党は早くから野党共闘を目指してきたが結局まとめることができず参議院選挙では単独で候補者を擁立せざるをえなくなった。
 
なんといっても自民党の攻勢は続き、株価は連日年初来高値を記録している。それなのに野党は攻めどころが見当たらない。そんなときの海外出張の無断延長だからこれに飛びついたのだろう。じつにレベルの低い対応といわざるをえない。
 
ところが与党側もおかしな行動をとった。川口委員長の解任決議案の採決までは審議に応じられないとして参議院の予算委員会の審議を欠席したのだ。委員会は野党だけが出席して行われた。
 
野党は川口委員長が自ら辞任しない場合は9日に参議院本会議を開いて解任決議案を採決する方針。
 
ほぼ2週間にわたって行われた国会での間抜けな出来事は「良識の府」と言われる参議院でのこと。与野党どっちもどっちだが、やはり野党が評判を落としたことになるだろう。民主党のあせりのなせる業か、政策で論戦ができない知恵のなさか。
 
民主党は野党が結束できたと言っているようだが、期待していた日本維新の会との選挙協力は断念した。民主党の支持母体が日本最大の労働組合の連合ということや憲法改正など政策の違いなどから日本維新の会が離れていった。
 
7月の参議院選挙では、政策もさることながら、自公が過半数を得てねじれを解消するかに関心が集まる。また相変わらず党内のまとまりを欠く民主党や、勢いが弱まってきた日本維新の会の議席数も気になる。今日午後参議院の本会議が開かれる。

衆議院選挙を巡って各地の高等裁判所で違憲や違憲状態の判決がでた。選挙区によって1票の価値が違っているのは憲法の趣旨に反するというもの。国政選挙が憲法に違反して行われたというのだからおだやかでない。国会は法律をつくる立法府だから憲法違反をおかして行った選挙で当選した議員では国会はなりたたない。
 
1996年に小選挙区比例代表制になって7回の選挙を行ったが、最高裁から違憲状態判決がでたのは2009年の選挙が初めて。ただ2012年の6回目の選挙は高裁から違憲などの判決が出た。しかしまだ最高裁の判決はでていない。
 
2009年に行われた衆議院選挙に対して最高裁判所が違憲状態の判決を下した。それにもかかわらず一票の格差を改善しないままに2012年に再び衆議院選挙を行った。国会が憲法を無視し、最高裁判所を軽視したのだから司法はほっておけなくなるのは当然。
 
憲法は選挙で有権者が投じる票のもつ価値は平等であって差があってはならないと規定している。ところが2009年の選挙では1票の格差が2.034倍、違憲状態で行われた2012年の選挙では2.425倍にまで広がった。
 
2011年3月に最高裁から違憲状態の判決を受けた翌年の11月16日に解散することが決まった。しかしそれまで与党と野党の意見の一致をみなかった。
 
解散を決めた日に選挙制度改革法を成立させた。この法律は衆議院の「一票の格差」を是正するため、300の小選挙区を「0増5減」するためのもの。この日参議院本会議で民主、自民、公明の3党などの賛成多数で可決正立した。
 
高等裁判所は、最高裁判所が違憲状態判決を下してから1年9ヶ月たっても是正しなかったのはその意志がないとみて今回の判決を下した。しかも解散を決めた日に改革の法律を成立させたのは是正の意思を見せようとしたポーズにしかみえない。
 
区割り見直しの作業に3ヶ月はかかる。当然国会はそのことを知ってこの日に決めたのだから是正の意志がないと見られても仕方がない。実際昨年「0増5減」の法案を成立させてから高裁の判決はでたが最高裁がどのような判断を下すか注目が集まる。もし憲法違反で選挙が無効になれば、その選挙で選ばれた議員が法律を作り、首相を選ぶのは許されないはずだ。 
 
一連の動きを見て弁護士たちは選挙の無効を訴えて16件の訴訟を起こした。そのうち2件に違憲の判決がだされたのは驚きだった。原告の弁護士が驚いていたのか印象的だった。他の14件が違憲状態で合憲は一件もなかった。また違憲の2件が選挙を無効としたが、選挙の無効判決は戦後初。一票の格差に対する司法の判断は次第に厳しいものだった。
 
広島高裁の判断は、最高裁判所の判決から今回の選挙までの間に格差が是正できなかった正当な理由があるとは認められないというもの。ようするに真剣に是正に取り組もうとしなかったというもの。
 
高裁は、ゆがみはもはや憲法上許されない事態だと国会を厳しく批判して、選挙を無効にする判決を言い渡した。また広島高裁岡山支部が選挙までに格差を是正しなかったのは「国会の怠慢だ」、「司法判断に対する甚だしい軽視だ」と批判した。
 
2009年の総選挙を最高裁が違憲状態と判決を下したが、次の選挙までに格差は是正されることを期待して違憲ではなく違憲状態との判決を下したのではないか。司法は、1票の価値は皆平等であるという考えを重視しながらも、国政の事情からある程度国会の独自の判断にも任せるという考えから違憲としなかったように思われる。
 
司法は、国会が最高裁判所の判決を尊重すると考えたが、まさか無視されるとは思わなかったのではないか。それを裏切られたために高裁は、これほど厳しい評価がされたのだろう。
 
3月28日、有識者によって構成される審議会は区割り改定案を首相に勧告した。17都県の42選挙区で区割りを見直した。その結果2.524倍だった格差は1.998倍におさまることになる。山梨、福井、徳島、高知佐賀の5県の選挙区で定数が3から2に減る。
 
衆議院の小選挙区は、10年に一度行われる国勢調査の絵結果を使って区割り(範囲)を決める。特定の政党や有権者に有利にならないように区割りされている。一票の格差はおおむね2倍以内に収まるように配慮されているが、2倍以内というのは法律で決められているのではなく最高裁判所の合理的という判断のようだ。
 
ところで定数が2倍以内に収まったとしても1人別枠方式が憲法違反になるという指摘がある。厳密に区割りを人口比例従うと人口の少ない鳥取県の定数を1とすると東京都は25から6増えて31になる。ところが東北や人口の少ない中国、四国の選挙区の定数は減ってしまう。
 
しかし、人口流動が激しく、過疎化かがすすんでしまう都市と地方の差はどんどんひろがってしまう。政治は都市中心に傾き過ぎないだろうか。
 
完全な人口比例にすると全国で21の選挙区で定数が増え21の選挙区で減ることになる。多くの国会議員が影響を受けることになる。市区町村の行政単位を割らないことを原則としているため格差をゼロにすることはできない。21増21弦でも格差は1.6程度になるという試算がある。
 
2011年の最高裁の判断は、あらかじめ各都道府県に1議席を配分する1人別枠方式が格差を生み出す原因になっているとして廃止を求めた。この方式のままでは0増5減では是正にならないというもの。それに初めから1議席を配分するのは人口の少ない県が有利になり、多い県は不利になる。
 
7月に参議院選挙が行われる。昨年10月に最高裁は、2010年に行われた参議院議員選挙の最大格差5.00倍を「違憲状態」とし、「都道府県を選挙区単位とする方式を改める必要がある」ことを指摘した。これを受けて国会は、昨年年11月に公職選挙法を改正し、選挙区を「4増4減」とした結果最大格差は4.75倍に縮小した。
 
しかし、弁護士グループは参議議員選挙の投票日の翌日に47都道府県の全部の高裁などに選挙無効の訴訟を起こすことを明らかにした。
 
政府は衆議院を「0増5減」にする区割りを実現する公職選挙法改正案を4月上旬に国会に提出し成立を目指す。しかし、民主党は「0増5減」法案を去年11月の解散を決めた日に自民、公明両党それにみんなの党が賛成し成立した。
 
民主党は「0増5減」法案には賛成していたにもかかわらず選挙制度の抜本改革と議員定数の削減を一括成立させることを主張して反対している。すなわち1票の格差を是正するための「0増5減」と「1人別枠方式」の見直しなどによる選挙制度改革、それに選挙制度改革とはまったく関係のない衆議院議員の定数削減の三つを同時に変えるというもの。なぜ三つを一緒に変えなくてはならないのかがわからない。
 
定数削減は、消費税増税で国民に負担をかけるから議員も自ら身を切る改革を行うためというもの。現状の議員数が、多すぎるのか適正数なのかが分からないままに削減するのか。選挙のたびに新人議員が100人も当選するのは議員が多すぎるのではないか。だから減らすというのなら分かりやすい。しかし実際は政治家か勝手につくった理屈にすぎないようだ。いつのまにか消費税増税を定数削減に摩り替えてごまかしているようにみえる。
 
定数削減で民主党は小選挙区で30減の270、比例区で50減の130とする案を提案している。一気にこんなに減らして大丈夫なのか。自民党は小選挙区比例区を30減の150とし、そのうち60を中小政党に割り振るというもの。なぜ中小正当に割り振るのか、分からない。
 
2009年の選挙で最高裁の「違憲状態」判決を受けたときの政権は民主党。判決を受けたのは2011年3月で菅政権だった。この年政権は8月に野田に変わった。民主党は多くの離党者がでたうえに党内はまとまりを欠いていた。
 
一方野党は、もはや民主党が政権担当能力を失ったとして解散を迫った。しかし民主党執行部は、今解散をしては大敗することは目に見えていたため是正の引き伸ばしをはかった。そして野党になった今また同じことをしている。
 
国民の政治を見る目は厳しくなってきた。このような態度をとり続ければ再び次の選挙で報いを受けることになる。1票の格差について最高裁から違憲状態判決がでたら真っ先に是正すべきだ。「0増5減」を優先してきめ、今後どのようにして選挙制度改革を進めるかを明らかにすべきだ。
 
議員定数の削減は必要と思えばやればいい。ただ問題は議員の数ではない。議員の質が悪すぎるのだ。民主党政権時に閣僚の質の低さをさんざんみせつけられてうんざりした。レベルの高い政治家によって国民のための政治を遂行してもらいたいものだ。

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